ドラえもん のび太と雲の王国では、株を売って王国建設の資金調達する「株主王国」というアイデアが登場します。仲間たちが株を購入して王国建設が始まるのですが、この「株主王国」というのは現実で言えばどういう状態なのか考えてみました。
株式王国の説明
作中から読み取れる株式王国の内容についてまとめます。
「株式」の要素
・株で集めた資金を元に事業を実行する。
・値上がり益が期待できる。
「王国」の要素
・「雲の国王冠」を被った者が王様になり、誰も逆らう事ができない。
どっちでもない要素
・株主に経営権は無い(スネ夫は主張するが結局実現しない。)
・王国施設の利用権が得られる。(資金で作られた施設は自由に使う事ができる。)
株主は何のメリットがあって出資する事になるのでしょうか。下記が関係しそうです。
1.値上がり益
ドラえもんが株式王国を説明する時に「いまにきっと値上がりして大もうけできるよ」と言っているので、株主は値上がり益を期待できるようです。(作中活かされる事はなかったけど)
2・王国の利用権
これは通常の株式会社には無い仕組みです。例えば遊園地の会社の株を買っても遊園地が使い放題になるといった事はなく、株の保有とその会社の利用は本来関係無いです。(優待等はありますが)
しかし雲の王国は出資金を元に国を建設し、施設利用という形で還元されるのがウリで、むしろ皆はこれを期待している感じです。
3.株主の経営権は実質ない
通常ならある経営参画権は無さそうです。スネ夫は当然あるものだと思い大株主の権利を主張しますが、理屈のわかっていないジャイアンに反故にされます。(ジャイアンも少額ながら株主なので、声の大きさで潰す総会屋っぽい)でもそれ以上にこの国の権力は王様が全てで、他は一切逆らえない仕組みがあるので、経営権は無い国のようです。
株式の中では「無議決権株式」が近そう。でも説明できない所あり。
通常の株式の中で近そうな概念は「無議決権株式」があります。これは議決権が無い事が最初から明示されており、値上がり益や配当金だけを期待するものです。これなら「株式と名乗っているのに経営参画権がない」は解決します。ただ「王国の利用権」に相当するものはこの仕組みにも存在しないので、これではうまく説明できない部分が残ります。
クラウドファンディング
みんなで出資して事業を実施して、出資者にはその事業恩恵で返すという点ではクラウドファンディングに近いとも言えます。キャラ達は雲の王国の利用を期待して出資しているので、そっちに寄っているという点ではこっちの方が近いかも知れません。でもこの方式は値上がり益はありませんし、事業が成功したら返金しないのが基本なのでその辺は違います。
ちなみに、雲の王国だけにクラウド…と言おうとしたら、クラファンのはcrowd(群衆)でした。
一番近いのは「個人向け国債」か
今回の株式王国の株式に最も近い制度は「個人向け国債」なのではないでしょうか。
個人向け国債の特徴
・購入で得たお金は国の公共事業などに使われ、国民はその恩恵を(間接的に)享受できる。
・値上がり益目的にも使える(本来は一定期限後に利子がついて返ってくるもの)
・経営権はもともと無い。
雲の王国と同じく、値上がり益の期待と出資金が国家事業に使われて享受できるという要素があるので一番近い感じがします。そう考えると「株式王国」は新アイデアとしているものの、実質は国債に依存した王国と言う比較的現実的にありそうな状態なのかもしれません。ただ国債は買わなくても国民は等しく公共物が使えるのでその点は違います。
最終的に雲の王国は崩壊 = 株式は紙きれに。
という事で株式王国とはどういうものなのかを考えてみましたが、最終的に雲の王国は雲もどしガスによって文字通りの国家崩壊をします。もう王国の利用できないですし、償還される事もないのでしょう。株式は価値0の紙切れになってしました。値上がり益を期待していたとしたらこの投資は失敗という事になります。まあ今回の場合、王国の利用権としての側面が強いので、短い間でも楽しめたという事で良いのでしょう。それにしても半株でスネ夫と同等の利用権を得ていたジャイアンが最も得したという事になりますね。いや、ドラえもんとのび太は株式を購入したか触れられておらずもしかしたら一切出していないのかも。だとすると一番得したのは二人って事なのかも…
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