大山のぶ代ドラえもん最後のED曲となった「あぁ いいな!」通称「なまず」と呼ばれており、歌詞とED映像のクレイジーさから大山ドラの末期感を象徴する曲という不名誉なイメージを持たれがちです。
「なまずはウロコが無い」「カレーの匂い」等のドラに無関係な歌詞。「金持ちになりたい」等の俗っぽい願い。その歌詞通りに展開するED映像。特になまずは藤子風のキャラが終始登場し、映画ゲストのような待遇です(でもここ以外一切出てこない)。いちドラえもんファンから見ても当時から「なんだこりゃ」という印象はありました。
歌手はモーニング娘。の元メンバー辻希美、加護亜依の2人組ユニット「W(ダブルユー)」です。
アイドル起用という事もあり当時のドラマニア界隈でも風当たりが強かった印象です。適当で無関係な歌があてがわれたという感じで語られる事も。
私はドラえもんファンでありハロプロファンでもあったので、良くも悪くもあれが何だったのかを読み解いてみたいと思います。(コンサート通うレベルのハロプロファンでしたが、ガチ勢には遠く及ばないです。)
詳細は下記に書きますが、「無理ゲーな状況下で手は尽くしたがハマらなかった一作」という印象になります。
歌側からの読み解き
作者「つんく♂」の公式コメントでは一応ドラえもん要素を説明。
作詞作曲者のつんく♂はこの歌の説明を公式でしています。
人間誰しも、「朝起きたら、○○○○になってたらいいな〜」って寝る前に想像したりしますよね。
今回の「W」は、他愛もない些細な夢から、無限の夢まで、女の子の様々な欲望と日常を曲にしました。
普段、通学途中にどんな王子様と出会うかわからないので、
精一杯、背伸びして、おしゃれして、背筋伸ばして、リップ引いて、
でも、地元の駅まで帰ってきたら、ちょっと「ほっ」として、
近所のおばちゃんと立ち話して、で、帰り道、どこかの家からカレーの匂いがしてきて・・・
結局寝る前「また、明日素敵なあの人にあえますように!」
とまあ、それを「なまずのぬいぐるみにおまじない」かけて就寝。なんのこっちゃわからないかもしれませんが「楽しい曲です」
引用元:つんく♂オフィシャルサイト「W(ダブルユー) 8月18日発売「あぁ いいな!」
是非聴いてください。
そういう意味で「のび太くん」の夢を叶えてくれるドラえもんのテーマ曲であるというのは
とても意義のあることだと思っています。
夢が叶うといいなという歌詞で、確かに「こんなこといいな できたらいいな」のドラえもん精神に沿った要素とも言えます。
ですが締めの文は「ドラをイメージして作りました」ではなく「ドラと共通点があると思います」という感じなので、ガチガチに向き合ったという感じではなさそうです。「女の子の夢や日常」とも言っているので軸足はドラソングではなくアイドルソング側にあるという感じです。
当時のハロプロは大人気。曲が先にあるパターンが基本形。
2005年当時のハロプロは絶頂期こそ過ぎていたもののまだアイドル業界No.1で、AKB等もない時期なので1強状態でした。単体アイドルソングとして売る事が前提で、タイアップはおまけくらいの関係性の曲も多いです。なのでこの曲もそういう系譜(ドラえもんを全く意識せず作った曲)であった可能性も十分あります。
しかし当時のハロプロでもコラボ先と密に連携した歌(松浦亜弥のティセラCM3部作など。アニメなら映画ハム太郎4作など)はあるので、ナマズもそのような意識で作られた可能性もあったかも。という方向で掘り下げてみたいと思います。
つんく♂氏の作詞時間は、1日?
つんく♂はモーニング娘。を代表とするハロー!プロジェクトのプロデューサーで作詞作曲もやる当時の大ヒットメーカーです。当時の作曲数はすごい量で、2004年も作詞約100個、作曲約100個。毎週CDがリリースされる状況だったのを覚えています。不休で作っても1作に平均1.8日。実際はプロデュース業等もしながらこの曲数ですから「あぁいいな!」作詞時間は取れて1日程度と想像されます。プロの世界はこのペースでも作れるらしいし、名曲は数時間で生まれたみたいな逸話もあるので手抜きとは限らないのですが、才能で素晴らしい歌詞が書けるとしてもドラえもんに沿ったものにする理解時間は取れなかったでしょう。つんく♂がドラえもんファンと聞いた事はないので(「ラーメン大好き小池さんの唄」って曲はありますが)意識して作ったとしても理解時間を取れずにドラえもんの一般的イメージから作詞したと思われます。
Wの次曲は「ロボキッス」。つんく♂はこれも候補に考えていた?
Wの2ヶ月後の次曲「ロボキッス」は、キスがしたい女の子の気持ちを歌ったものでタイアップ無し。ドラえもんとのコラボ関係はありません。しかし歌詞の内容に必然性が無い感じで唐突にロボットという言葉が入ります。
この不自然な「ロボ」という言葉の挿入、もしかしたらつんく♂はドラEDのオファーを受けた時にドラえもん的なイメージで「夢を叶える」「ロボ」あたりをキーワードに何パターンか作ったのではないかと考える事もできます。色々作った結果、最終的に「あぁ いいな!」を選び、残りの曲は別の形で再利用した。なんて可能性もあったりするかも。
支離滅裂な歌詞はつんくの引き出しの一つ。意図的にやってそう。
公式コメントにも「なんのこっちゃわからない」と書いてあり、無茶苦茶な歌詞は本人も自覚の上です。当時のハロプロはこういう歌は珍しくなく、手抜きというよりは通常運転、意図的な壊しという感じです。
特にWが元々所属していた「ミニモニ。」は子供をターゲットにしたユニットで、こういう支離滅裂な歌で大ヒットを飛ばし児童層にもハロプロ人気を広げた功績を持つ存在です。
ドラえもんとW(元ミニモニ)という組み合わせを考えた場合、つんく♂の引き出しの中から子供ウケするミニモニ的な歌詞を採用するのは自然な流れと言えます。
まあ、当時は「ミニモニ数え歌」「すき・すき・きらい・きらい・きらい・すき」みたいに本当に手抜きっぽい歌詞もあるので意図した崩しか手抜きか判断が難しいのですが…。
問題の「なまず」。これに意味は無いのだろう…
歌詞に脈略が無いとはいえ大半は「叶うといいな」「日常の幸せ」みたいな言葉の羅列で、まあ夢溢れる歌詞です。
しかし異質なのが冒頭の「なまずはウロコが無い」です。ここだけ急に豆知識です。
ここに何か深い意味を見出す事ができるのか…公式コメントでは「なまずのぬいぐるみにおまじないをかける」という、説明になっていない謎情報だけは提示されています。願掛けをドラえもんに見立てている解釈もできますが、ドラえもんの見立てがなんで「なまず」なのか?など謎ばかりです。
正直…ドラえもんを意識したものではなく、単に面白そうなフレーズを入れただけと考えた方が自然だと思ってます。
アイドルプロデュースにも手は抜けない
歌手のWにとってこの歌はデビュー2曲目です。しかも1曲目はカバー曲なのでナマズが初のオリジナル曲です。メンバー辻加護はこの頃、モー娘。時代のちびっ子キャラから脱却するかどうかの試行錯誤中で、前身のミニモニでも大人路線を試したり、Wの1曲目は歌唱力重視にしたり1。そんな中でナマズは元々の人気だったちびっ子路線に回帰の内容ながらハモりを多用した歌唱力路線でもあり本人達のアイドルの立ち位置を探ってる感もあります。なので「盤石な人気者がドラの曲を!」という余裕ある状態でもなく、ドラに特化もしきれない事情もあったのかと思います。
当時はこんな感じだった?
つんくサイドとしてはこんな感じだったのかも?という想像を書くと
・年間100作曲100作詞という超多忙な中でドラえもんEDのオファーを受けた。
・ドラえもん理解時間は取れないので、深く即した歌を作るのは現実的に無理な状況だった。とはいえ無関係の歌を提供するのではなく一般人並のドラ知識から連想し「夢を叶える」「ロボ」などを織り込んだ歌をいくつか作った。その中で「あぁいいな!」が一番しっくり来たのでそれを完成させ提供した。
・支離滅裂な歌詞は、それこそが子供向けつんくソングのニーズだと考え意図的に組み入れた。
・なまずに意味は無い。
みたいな感じだったのかな…と想像します。
つんく♂がテキトーに曲を提供したというよりは、無理ゲーな状況でも切れる手札は全て出した。というプロ根性は出してくれた印象があります。まあどれだけベストを尽くしても、結果としてハマらなかったとすればそもそもオファーを受けるべきではなかったというのが答えなのかもしれません。
「なまず」というワードチョイスのインパクトは良くも悪くも記憶に残りドラえもんファンの語り草になったので、記憶にすら残らないモノよりはよかったのか…?なかなか複雑な気持ちですが、20年経過し新ドラが安定している今ならば笑い話にできるようにはなった気がします。
脚注
- 1曲目はザ・ピーナッツの名曲「恋のバカンス」のカバーで、ハモリを多用した歌唱力重視の楽曲かつ、元ネタが双子である事を意識した、息ぴったり感を押し出した歌でした。また2ndシングルに行く前にいきなりアルバム「デュオU&U」をリリース。これも全曲が昭和の名曲カバー(ほとんどがデュオの曲)と言う内容で、アイドルソングというよりはデュオ感を全面に出していました。 ↩︎
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