ドラえもんとレギュラー達の誕生日設定の初登場、移り変わりについてまとめてみた。

ドラえもんの誕生日2112年9月3日は有名ですが、他のレギュラーキャラにも誕生日が設定されています。しかしF先生が全て作ったわけではなく、関係者が作った外伝的設定も含まれます。それらが時に風化して変更されたり公式サイドに取り込まれたりして今に至るのですが、最大限まとめてみました。(間違いあればご指摘大歓迎です)

まずは全貌

まずは全貌。初出と変遷、誰が作ったかです。次項から詳細と小ネタ紹介します。

ドラえもんの誕生日は超有名。F先生原作だけど裏にチーフアシの協力。

ドラえもんの誕生日(2112年9月3日)は1975年4月号「ドラえもん大事典」で秘密紹介企画として登場。同時に身長や体重も129.3という設定も登場し、誕生日も「1293」を使った数値の一つになってます。
この設定はF先生一人ではなくチーフアシスタント方倉陽二と一緒に考えたと言われています1。と言っても最終的にF先生が設定と絵を描き雑誌掲載し、ドラえもん11巻にも収録されているのでF先生の公式設定と扱って間違いありません。

のび太、ジャイアンは原作の話に登場。掲載号と誕生月が同じ。

のび太誕生日(8月7日)は1972年8月号「のび太の生まれた日」、ジャイアン誕生日(6月15日)は1980年6月号「ハッピーバースデージャイアン」で初登場します。設定集のような登場ではなく、誕生日ネタの話の流れで作中にサラッと出てきます。
特徴的なのはどちらも雑誌の掲載月号と同じ誕生月です。F先生は基本的に掲載号の季節に合わせた話を作るので、たまたま誕生日ネタが浮かんだ時が8月号、6月号だったから、誕生日も掲載号に合わせた月に設定(日は適当に決めた)…って感じだったのかもしれません。ともあれ原作にはっきりと月日が書かれているため揺らぐ事無くずっと公式設定です。

なお、のび太はコミック「ぼくの生まれた日」の回で昭和三十九年(1964年)という生年設定も登場していますが、これはあくまで当時換算でそうだというだけで固定的なものではありません。実際に雑誌連載時(1972年)の時には同じコマが「昭和三十七年」と書かれており常に変更されています。

ドラミの誕生日は元アシスタントによる「方倉設定」

ドラミの誕生日(2114年12月2日)は1979年10月号に登場。これは元チーフアシスタント方倉陽二が読者の質問に答える形で秘密を紹介する漫画「ドラえもん百科」の中で登場します。この漫画は方倉先生が考えたネームをF先生がチェックした上で掲載するという半公式漫画という立ち位置で、その後本当に公式に原作にも反映された設定もあるし、この場限りの設定で終わった設定もあり、この漫画由来の設定は通称「方倉設定」と呼ばれています。
このドラミ誕生日は、ほぼ公式昇格の設定です。F先生の原作漫画に逆輸入登場する事は無かったのですが、その後の小学館や藤子プロによる設定本やアニメ等では全てこの誕生日が採用されており、今でも使われ続けているのでもはや公式扱いです。

スネ夫、しずかの誕生日を設定した幻の「新ひみつ50」設定

スネ夫、しずかには今は消えた誕生日設定があります。コロコロ1980年7月号「ドラえもん なぜなに新ひみつ50(監修:藤子不二雄・カット:金田エイジ)」にスネ夫(3月29日)としずか(12月2日)という誕生日が登場します。ドラえもん達に関する50の質問に回答する企画で、誕生日も登場。既に設定済のキャラはそれを掲載してます。(ジャイアン誕生日は1ヶ月前に出たばかりですがちゃんと反映されてます。)未設定だったスネ夫としずかはここで新規設定されます。誰が考えたのでしょうか?確実な情報は無いのですが方倉陽二先生の可能性が高そうです。

なおこの誕生日設定は新ひみつ50とドラえもん百科で2回掲載されたものの、どちらも単行本化されなかった(新ひみつ50は元々単発企画のため。ドラえもん百科の該当回は3巻収録相当だけど2巻までしか発売せず)ので、雑誌を見た人しか知らない設定となり定着せず風化したのかなと考えらます。(同じ方倉設定なのにドラミだけ風化しなかったのは2巻に単行本収録された事が大きそう)

(しずかドラミが同じ誕生日の謎)

ここで初登場したと考えられるしずか誕生日ですが、なぜかドラミと同じ日でコマにも「ふしぎなことにドラミと同じ十二月二日だって。」という説明で紹介されます。新規設定できる状況でなぜわざわざドラミと被る誕生日にしたのか。謎です。ドラえもん百科でも2人並んで表示されドラミ側に「しずかちゃんと同じ誕生日なんだね。これでわかるように、12月2日生まれの女の子は、かわいい女の子になる」と同一誕生日である事に触れてます。同じ誕生日という面白みを狙ったという事なのか、別の初出があって偶然被っちゃったから「ふしぎなことに」と説明したとかなのか…

後年だけどスネ夫しずかの新定番になった「月間ドラえもんルーム設定」

年月が空き、コロコロ1993年9月号の月間ドラえもんルーム第4回「ドラえもんの誕生日」の巻(三谷幸広)で、ドラえもんの誕生日を祝う話で、他にもドラミやのび太達レギュラーキャラの紹介もされる内容です。そこでスネ夫(2月)、しずか(5月)、出木杉(5月)、ジャイ子(4月)という誕生日が新たに設定されます。この設定はF先生に確認を取られていたようで、藤子不二雄ファンサークル ネオ・ユートピアの会誌に紹介されています。(有識者の方に教えて頂きました!2

現在公式設定として紹介されている誕生日(中略)という設定は、コロコロコミック’93年9月号「月間ドラえもんルーム」に掲載するべく、編集者がキャラクター達の誕生日をF先生に相談して決められた、というのが事実です。

引用元:NeoUtopia33号 P168

この設定はその後、コロコロ1996年11~12月号の「最新ドラえもんひみつ百科(三谷幸広)」にも4名分全て掲載され1998年2月に単行本化もしたので後年に残る事にもなりました。3

という事でスネ夫としずかは以前と全く別の誕生月になったわけですが、F先生と相談した上で決めた設定だからか、原作に直接載っているわけではないけど2024年現時点では藤子プロや小学館の公式出版物(「てんコミ探偵団」など)にも書かれていていたり、Fミュージアム(F原作だけを重視)やアニメ放送でもその月になると誕生日企画をやるなど、公式媒体が全方位的にこの設定で公認している状態です。

ジャイ子と出木杉も同じルーツなのになぜか定着せず。

上記のコロコロ1993年9月号でジャイ子(5月)、出木杉(4月)という誕生日設定も作られたわけですが、スネ夫しずかと同じルーツを持つ(=F先生と相談があったはず)にも関わらず、公式媒体では積極的に紹介されていない感じがあります。
例えば2018年小学館ドラえもんルーム発行の「てんコミ探偵団」では出木杉の誕生日欄が「不明」と明記されていたり(しずかやスネ夫は載ってる)4、2006年同著「ドラえもん深読みガイド」ではジャイ子と出木杉はスネ夫らと同じ紹介枠があるのに誕生日が未記入という状態で、単に脇役だから省いたというより書く事に消極的な感じになっています。不憫です。

まとめ

まとめるとこんな感じになります。

キャラ誕生日の現状
ドラえもん、のび太、ジャイアン原作描写があり明確な公式設定。
ドラミ方倉設定が市民権を得て公式サイドでも公認状態。
スネ夫、しずか新ひみつ50設定があったが風化。再設定された月間ドラえもんルーム設定が市民権を得て公式サイドも公認状態。
ジャイ子、出木杉月間ドラえもんルーム設定があるのだが公式サイドは消極的(不明扱いのまま)

ジャイ子と出木杉はイベント企画みたいのがほぼ無いキャラななのでそもそもモチベーションが低くて、原作に無い以上は不明にしておこうって感じなのでしょうか。スネ夫としずかは商品展開などの都合もあり原作外であっても誕生日設定は重要なので取り込んでいるとかなのでしょうか。

補足:その他の別設定達

現在に至るまでの流れは以上ですが、それ以外の亜種の設定や小ネタを紹介します。

STAND BY ME ドラえもんにチラっと映るスネ夫の詳細日

2014年8月8日映画「STAND BY ME ドラえもん」にスネ夫の誕生日詳細が判明するシーンが出てきます。のび太の結婚前夜にスネ夫から電話がかかるシーン、その携帯電話に「生年月日1965年2月18日」と読み取れる画面が出てきます。2月という公認設定や、のび太は1964年生まれと描かれた事がある原作設定を下敷きにしたものと思われます。(日の部分はなんか由来あるのでしょうか…)
メチャクチャ小さい画面にギリギリ読み取れるというレベルなのでお遊び小ネタという事なのでしょう。これを公式サイドが公認化するような動きも見られず、これっきりの設定という感じで終わってます。

ドラえもんの現代の誕生日という概念が出る「ロボットのふしぎ」設定

学習まんが「ドラえもんロボットのふしぎ」(1977)内のアシスタント竹村よしひこの独自漫画「ドラえもんのたん生日のまき」はドラえもんに現代の誕生日を作るという話です。

話の概要

しずかの誕生日パーティ(日付不明)が開催され、のびスネジャイ達が自分達の誕生日の時もよろしくと盛り上がる。しかしドラえもんはションボリ。どうやらドラは未来生まれだからそれまで誕生日が無いと言う事らしい。そこで皆でドラえもんに誕生日を作る事にする。早い方が良いと翌日をドラえもんの誕生日に決めてパーティ開催、ドラえもんは大喜び。

しずか「そうだわ。ドラえもんはみらいの生まれだから、それまでたん生日はないのね。」
(中略)
ジャイアン「ドラえもんにもたん生日をつくってやろうじゃないか。」
(中略)
スネ夫「あしたにしよう。あしたがドラえもんのたん生日だ。」

引用元:ドラえもんロボットのふしぎ(1977/7/20)「ドラえもんのたん生日のまき」

この話では未来の製造年月日とは違う、お祝い用の現代の誕生日を作ったという設定です。日付は不明ですが、「しずか誕生日の翌日」です。
既にこの時期にはドラえもんの公式誕生日は設定されていましたし、実際同じ本の別ページには誕生日が2112年9月3日であるという説明も普通に載ってたりします。なので「誕生日は未来だからまだ生まれておらず、それまでは9/3は誕生日では無い」という解釈って事でしょうか。なかなか面白い設定です。
またこの話ではスネ夫の誕生日は来月、次にジャイアン、その次がのび太というセリフもあるので他キャラ達の誕生日もおおまかに推測できますが現代の公式とは全く合わない時期感です。(この頃はドラのびしか公式誕生日なかったですし)

ドラえもんとジャイアンの誕生日の元ネタはアシ説というのも。ちょっと怪しい。

「ドラえもんの誕生日はアシスタント羽中ルイの誕生日9/3からとった」「ジャイアンの誕生日はアシスタントえびはら武司の誕生日6/5を参考に作られた」という証言が存在します。ただ若干信憑性に疑わしい部分もある説で、それについては別に記事を作成しました。↓

注釈など

  1. 「方倉陽二記_雲遥かなり」等に描かれています。 ↩︎
  2. ドラワークスさんに教えていただきました。ありがとうございました! ↩︎
  3. ※この本の執筆時について誕生月をどう用意したのか三谷先生御本人に質問させて頂いた事があるのですが「詳しいライターKさんが資料を用意してそれに倣った」との事でした。ライターKさんは1993年の設定を拾ってきた。という事だと思われます。 ↩︎
  4. 「ドラえもん公式調査ファイルてんコミ探偵団」は2018年という比較的近年に監修:藤子プロ、編:小学館ドラえもんルーム(原作側の立場)で書いており、巻頭に調査エリアの宣言「基本的にてんコミとF大全集を調査範囲としている」旨があり、要はアニメ設定や方倉設定のようなF先生以外が描いた外伝漫画は範囲外ですよという方針を示しています。なのに原作に無いドラミ、しずか、スネ夫の誕生日については採用している状態のため、これを「事実上の公認状態」と当記事で呼んでますが、同じルールを適用するならジャイ子や出木杉も誕生日同じルーツから紹介すべきですが、なぜか出木杉は「不明」となっているという不憫さです。(ジャイ子は紹介欄そのものが無いので判断不可) ↩︎

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