「モアよドードー」「雲の王国」「奇跡の島」の絶滅動物ラインナップの意図的な差を考える。

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ドラえもんの短編「モアよドードーよ、永遠に」は絶滅した動物達を別の島に連れて助ける話ですが、この話と連続的な関係にある作品として映画「のび太と雲の王国」と「のび太と奇跡の島」があり、どれも絶滅動物が集まる地域が登場します。
よく見るとそれぞれに登場する絶滅動物のラインナップには明確な差異があったので、そこから見えてくるコンセプトを整理したいと思います。

各作品に出てくる動物と絶滅時期

各作品の関係性を説明するとこんな感じで、どれも「モアよ」と接続した話です。

それぞれの作品説明

「モアよ~」…ドラえもん達が既に絶滅した動物をタイムホールで捕獲し、無人島に逃がす事で絶滅を回避させるお話。
「雲の王国」…「モアよ」で助けた動物が再登場。彼らは異種族の天上人に再度保護され、他の絶滅動物達と共に保護地区で暮らしていたという設定。
「奇跡の島」…「モアよ」の話を導入部に使ったリメイク的な位置づけ。救った動物は未来にある絶滅動物保護島に連れて行って他の動物たちと暮らしたという設定。

各作品に出てくる動物達は下記のようなラインナップになります。

並べてみるとそれぞれ扱う動物のレンジが異なりますね。
 「モアよ~」…数100年以内(数百年)
 「雲の王国」…数10000年以内(数万年)
 「奇跡の島」…数10000000年以内((数千万年)

それぞれの範囲がどうして違うのかを考えてみたいと思います。

「モアよドードーよ」は、ここ数百年の「人間の身勝手さ」と向き合う感じ。

「モアよ~」の絶滅動物は近代文明(数百年以内)の範囲で、人間の乱獲や生態系破壊が絶滅の原因です。人間の欲望、エゴによって絶滅したという感じで、理性的な判断ができていたならば食い止められたかもしれない存在です。
この話はそういった近代文明の暴走と向き合い、このままではいけないという人間の中の負の側面への反省(=考えを正せば変えていけるもの)という感じのメッセージを色濃く反映したラインナップなのかなという感じがあります。

「雲の王国」は、人類そのものを罪人とみなす動物ラインナップ。

「雲の王国」は絶滅動物の範囲が1~2万年前まで広がります。
現実史で見るとこの時代の人類は石器時代で、対象動物達は原始人類の乱獲(オーバーキル)で滅んだという説がある動物郡です。この辺になると人間の身勝手なエゴ(理性的な判断不足)ではなく、人類も野生種の一つなので生存競争的な意味合いが強くなり、「あのような事はすべきではなかった」みたいな理性的な文脈では語りにくいです。
しかし天上人は1~2万年前時代から監視し、これら絶滅動物を回収保護していたという事になります。天上人から見れば「地上人類とは古来より他の動物を追い詰めて生態系を破壊する存在であり、個人差ではなく種レベルで問題のある存在」という感じに捉え、より大きな視野で断罪する感じです。だから地上人全体を悪とみなし、ノア計画(大雨による地上の一掃)を実行するという理屈に繋がるのかなと思います。なので絶滅動物の年代を広げたのは、地上人類そのものが持つ罪というスケールを出す演出だったのかもと思えます。

あとは単純に雲を彫り抜くギミックとしてグリプトドンを出す必要がある物語構成や、映画的なスケール感の演出という現実的な理由でより珍しい動物を出したかったというもあるかもしれません。

「奇跡の島」は、考古学的な保護っぽい。

「奇跡の島」は、数千万年前の絶滅動物までさらに広がります。それら太古の絶滅動物は人間が存在しない時代の動物なので絶滅の原因に人類の責任という要素は完全に無くなります。これらはタイムマシンではるか昔から連れてきて未来世界で保護されています。作中では「なぜ絶滅したかの原因調査と、これ以上絶滅させないための研究」と言われているので、他の作品と異なり、人類の罪滅ぼしというよりは考古学的な観点で取り組んでいる保護活動のように見えます。ジュラシック・パーク的なロマンもあるのかもしれません。

補足

上記のまとめの総論を崩すものではないですが、補足しておいた方が良さそうな動物について説明します。

オジロヌーは絶滅していない。

「モアよドードーよ、永遠に」のオジロヌーは話の流れでは絶滅動物のように描かれていますが、実際は現代でも絶滅していません。調べてみましたが、1930年代に野生種は絶滅して危機的な状況にあったけど、飼育個体を元に増やして現在は回復しているようです。1これを登場させた意図はなんだったのかは気になる所です。
漫画を注意深く読むと、冒頭のTV番組では絶滅動物と絶滅寸前動物の両方を紹介しており対象を絞ってはいません。またのび太が動物に「きみたちほんとはもう地球上にいないはずの動物なんだよな」と言うシーンはオジロヌーがいない状態で発言します。F先生も絶滅していない事は承知していて、鳥ばかりの並びにバリエーション豊かにするために絶滅危惧種も登場させつつ、しかし物語的にウソの無いよう避けた描写(物語的には全部絶滅種だからこそ救ったように見せているが、深く読むと危惧種も救っている)としてやっていたのでしょうか。推測なので真実は不明ですが、もしそうだったら凄いです。

フォロラルコスの絶滅時期(当時は正解)

フォロラルコスは現代学説では180万年前には絶滅とされています。なので雲の王国のコンセプト「人類のせいで滅びた種」から外れるように見えるのですが、しかし調べてみると、このフォルスラコス科の代表格であるティタニスは、当時は1万5千年前までいたのではという説で知られていたけど、2006年に新しい学説で180万年前が有力になったようです(当時は1万5千年前の化石と混ざって発見されたのでそう思われたが、最新の元素分析計測したら180万年前と判明した)。なのでF先生の描いていた当時はフォロラルコス(の代表格であるティタニス)は人間と同じ時代を生きた動物という説だったようなので、その知識から描いたのだと想像します。なので上の図ではなおフォロラルコスは今はフォルスラコスと呼ばれているみたいで、雲の王国の声優の発音はフォロラルコスですが、Netflixで配信されている字幕はフォルスラコスと表示されます。

ムカシダイダラアホウドリは架空の鳥

雲の王国の絶滅保護州にいる生物は実在のものばかりですが、ムカシダイダラアホウドリだけはF先生創作の架空生物です。2
これは他の動物のように紹介されるだけの存在ではなく、天上人の雲から脱出する目的に必要な存在として登場します。のび太とドラえもんを乗せて飛べるような生物は存在しないから、架空の生物にしたのではないかと想像します。

あとがき。絶滅動物の調査精度について。

今記事は多数の絶滅動物の絶滅時期について書いています。絶滅動物は専門外なので調査しながら書きました。怪しい情報を書かないようwikipediaや専門的だと思われるページを複数見ながら3できるだけ間違えないよう心がけたつもりですが、いかんせん素人ですし、また現代の学説がF先生の見聞きした当時の学説とは異なる可能性もあるし、精度については自信の無い所もあります。
なので間違いがあればぜひ指摘して欲しいですし、詳しい方の意見が聞ければとてもうれしいです。
記事では絶滅動物の絶滅年はシンプルにまとめましたが、一応調べた限りの詳細も乗せておきます。

動物名絶滅年モアよ雲の王国奇跡の島
オジロヌー1936年4
フクロオオカミ1936年
リョコウバト1916年
クアッガ1883年
ドードー鳥1681年
ジャイアントモア300年前
グリプトドン6000年前
スミロドン(サーベルタイガー)58000年前
マンモス10000年前
メガテリウム10000年前
フォロラルコス15000年前6
エラスモテリウム30000年前
カリコテリウム360万年前
エピガウルス500万年前
インドリコテリウム2000万年前
ディアトリマ5000万年前

補足、脚注

  1. 河井質店さんに興味深い情報を教えてもらいました。当時の日本の図鑑でもヌーは野生では絶滅しているが飼育個体が僅かに残る危惧種であると紹介されているのでF先生も認識していた可能性は高そうです ↩︎
  2. ネッシーも架空の生物ですが、こっちは世界的に有名なUMAの借用なのに対し、ムカシダイダラアホウドリはF先生の創作生物という違いがあります。 ↩︎
  3. 参考にしたのはwikipediaの各動物の該当ページ、古生代の動物を網羅した「古生代の住人」の該当動物ページ、フォロラルコス(ティタニス)の絶滅時期はBBCニュース、その他諸々です。 ↩︎
  4. 実際は絶滅しておらず野生種が絶滅した年(詳細は記事本文) ↩︎
  5. サーベルタイガーは通称名で、その科の中で代表的な種がスミロドンなので同一のものと扱いました。 ↩︎
  6. フォロラルコスの代表種であるティタニスの古い学説の場合。(詳細は記事本文) ↩︎

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