ドラえもん公式設定と言っても色々なレベルがある。方倉設定、アニオリ設定等。

ドラえもんは誰もが知っている作品だけに「実はこんな設定があった!」みたいな雑学は盛り上がります。長い歴史と広いメディア展開があるので色々な設定がありますが、各々のドラえもん観でそれらを楽しむのも良し。です。
ただ、由来を混乱して「これもF先生が考えたのか!すごいなあ」と誤解したり、都市伝説を公式設定と勘違いしないよう、設定の由来を知ればより楽しめると思いますので、レベル分けをしてみました。

設定のマップ

全ての設定を書くのは不可能ですが、様々な設定のレイヤーと各由来の代表的な雑学設定をマップにしてみました。区分名は私が勝手に名付けたものも多いです。設定に上下があるわけではないですが、便宜上作者に近いほど上としてます。作者以外の書いた独自設定も人によっては非公式と呼ぶことがありますが、公式ライセンスの範囲の作者外設定という感じで一旦公式と呼んでます。


なお基本設定レベルで原作とアニメが違う所もありますし、知名度的にアニメ設定の方が慣れ親しまれている事もあります。例として原作では「のび太は小4」「しずちゃんと呼ぶ」「ドラえもんがのび太を呼び捨て」等です。

てんコミ設定:F先生の選集。最も公式だけど未完。

基本の単行本「てんとう虫コミックス全45巻」です。全話収録されているわけではなく全1345話の内821話収録されています。これは元が学年誌連載という都合、同じような第一話や最終回が複数あったりするのをF先生が整理しているからです。↓

小学館ドラえもんルームコメント

執筆された全『ドラえもん』から、藤子・F・不二雄先生が自ら収録作を選び、順番を決め、時には加筆修正して編まれたベストセレクションです。

F先生の入念な判断を経たものばかりなので最も強い公式設定と言えます。有名な設定が多いですが、意外なものだと「スネ夫には弟スネツグがいる」はこの範囲の強い公式度だったりします。
また映画原作「大長編ドラえもん1~17巻」もF先生本人が描き単行本で加筆修正していますので同レベルの扱いと言えます。

45巻の間にも設定変更はある
この範囲全てが不変の設定でもなく、3巻の「しっぽを引っ張ると姿が消える」という設定は消滅し、途中から機能停止スイッチに変わりました。後にF先生が「便利すぎてもまずかった。この設定はなかったことにしました」旨の発言をしておりこのような設定変更もあります。

完結版ではない
実は46巻以降も刊行予定でした。しかしF先生が逝去された事で選集の意図を続ける事ができなくなり45巻で終了。なので未完とも言える状態です。よって「てんコミに載ってない話は全て非選」と言うわけでもないです。

F先生の原作全て(大全集など):自筆だが、意図的に消した設定もある

てんコミから外れた話が524話もあるのですが、これらもF先生が描いた物ですのでもちろん公式です。「藤子・F・不二雄大全集」で全話見る事ができます。ここから多くアニメ化もされてますし、ここにしかない設定「ノビスケは30歳で結婚」等もあり、小学館や藤子プロなどの公式側がこの範囲から話や設定を紹介する事は珍しくありません。「ドラえもんの背中にはメンテ用のハッチがあり空け閉めできる」なんてのもあります。

ただ意図的にてんコミから外した話もあり、有名なのはドラえもんにはライバルのあひるロボット「ガチャ子」がいたという設定ですが、これはF先生が後に「ガチャ子ちっともよくなかった。ガチャコはいなかったことになった」旨を語っていますので、何十年もアニメ化せず、藤子プロらも積極的には紹介せず資料的に扱う程度です。

F先生が原作に採用するまでの発案者がわかっているものも。

F先生の原作漫画の中には元ネタ者が判明しているものもあります。最も大きなものは、ドラミちゃんは小4女子読者の「女の子版ドラえもん出して」と言うはがきを元にF先生が大幅なアレンジをしてドラミという妹キャラを生み出したというものです。またF先生はアシスタント雑談などからアイデアのヒントを見つけた場合100円で採用したそうで、有名なのはアシのえびはら武司が雑談で言った「ケロッと疲れが治るサロンパス『ケロンパス』」もひみつ道具として100円採用され、デザインも任せたそうです。また後述する方倉陽二はチーフアシ時代に一緒にドラえもんの設定を考えたと言われており、てんコミ11巻のドラえもん大事典の各種設定の一部を考えたとされます。

という事で、F先生原作の範囲でも元をたどればさらなる発案者がいたりします。
もっともそれら単発アイデアはF先生が物語に昇華しF先生の名義で発表したのだからもうF先生の原案設定と言っていいでしょう。そもそも創作全般はどんな人も0から生み出しているのではなく様々なアイデアを組み合わせてクリエイター独自に仕上げるわけだし、F先生はこういうアイデア達を「タネ」と呼んでおり、雑誌や映画などからも仕入れて自身のアイデアに仕上げているのでしょう。

F先生の証言:描いてはいないけど重要な情報

F先生が漫画としては描いて無いけど、インタビュー等から読み取れる設定です。これらも公式設定に近い扱いを受ける事があります。

例えば「ジャイ子の本名」はF先生の証言を頼りにしています。「同名の子がいじめられないよう本名は設定しない(別紙壮一の伝聞)」とも「そのうち漫画の中で(本名を)書きますよ」とも言っておりブレはあるものの「ジャイ子は本名ではない」という点においては一致しており、公式設定ではジャイ子はあだ名だと解釈されています。

またF先生の言葉の扱いで意見の分かれる設定として「ドラえもんが耳を失った理由」というのがあり、F先生自身てんコミ原作で「ネズミに耳をかじられた」と描いているのに、映画「2112年ドラえもん誕生」のスタッフ主導で作られた設定「ネズミロボに耳をかじられた」をF先生が「混乱しているドラ情報、本作が決定版です」との発言をしたため、原作に描かれた事を優先すべきか、F先生の作ではないけど公式宣言した言葉を優先すべきかでファンも公式も迷っている感じで、今のアニメでも話によって「ネズミ」「ネズミロボ」どちらの設定も未だに登場します。(近年は「ネズミ」が優勢な感じなので原作優先してる感あります)

先にも触れた「ガチャ子はいなかった事にした」などの証言も、F先生が描いたという公式と、それを取り消す発言をしたという公式の両面がありどちらを優先して考えるかは文脈で使い分ける必要があります。(アニメや小学館は証言優先にしている感じあります)

方倉設定:元チーフアシの半公式漫画。明確に公式設定化したものも。

藤子スタジオのチーフアシスタントを務めていた方倉陽二氏は、ドラえもんの秘密を紹介する「ドラえもん大事典(てんコミ11巻収録)」をF先生と一緒に考えたと言われている人です。
藤子スタジオを退社し漫画家としてデビューした後もF先生から任され、ドラえもんの秘密を読者質問に答える形で紹介する独自漫画「ドラえもん百科」をコロコロに連載します。アイデアを方倉先生が作りネームをF先生がチェックする形式で描かれたとされており、F先生確認済の半公式漫画という特異な立ち位置でした。F先生が考えた設定ではないという意味で「方倉設定」と呼ばれます。

大山アニメ版に強く反映されて今では基本設定となった有名な設定も多く残し、「ドラえもんが青いのは、耳を失った事で青ざめたから」「ドラミの大好物はメロンパン」も原作に無い設定ですがアニメでは大山ドラ、わさドラでも採用され続けている設定です。
完全に原作にフィードバックされたものもあり「ドラミのタイムマシンはチューリップ型」は方倉設定で作られましたが後に原作にF先生の手で描かれた事で原作公式に昇格しました。

とはいえ「ドラえもん百科」はかなりギャグ色の強い漫画で、大半の設定は今のアニメ等には反映されていないものになっています。(ドラミに彼氏が4人いるとか)

他漫画家のドラえもん作品:外伝や学習漫画など

方倉設定以外にも、別アシスタントや関係漫画家によってスピンオフ漫画、学習漫画などが多く描かれておりその中でだけ登場する設定もあります。

ネットで有名なのは「のび太の早撃ち速度は0.1秒(ゴルゴや次元より早い)」というのがありますが、これは「ザ☆ドラえもんズスペシャル」という漫画(シナリオ宮崎まさる・作画三谷幸広)で登場した設定で、F先生原作には無い独自設定です。

F先生別作品:パロディレベルも多いが世界観が一部繋がるものも

F先生が描いたドラえもん以外の別漫画作品にドラえもんと絡む設定が描かれ、そこから読み取れる設定もあります。

例えばドラえもんのび太の日本誕生に登場したゲストキャラ「ククル」は、漫画チンプイの主人公エリの先祖という設定があります。
またドラえもんに時々出てくる人気女優、星野スミレはパーマンのメインキャラ、パー子の事で、パー子でありアイドルだった星野スミレの大人になった姿がドラえもん世界の星野スミレという設定があります。

アニメ設定:ブレない基本設定もあれば、単発設定も。

ドラえもんが今日でも高い人気を得ているのはアニメが継続している事が大きいです。
原作よりも長く多くのエピソードを放送していますのでむしろこっちの設定の方が市民権を得ているというのは多くあります。「しずちゃん」より「しずかちゃん」呼びの方が一般的になっているのは代表的な例で、小学館や藤子プロなど原作側の立場でも広報などでは「しずかちゃん」呼びにしているほどです。

わさドラでもいくつか独自の基本設定が加えられ、しずかちゃんが入浴や就寝時に髪をほどくようになったのはわさドラ独自(2005/6/10「ココロコロン」で初登場)で、髪おろしデザインははわさドラの発明です。またスネ夫の一人称が原則「ボクちゃん」なのもわさドラのみの基本設定です。

そのように基本設定としてアニメ独自としてブレずに固めている要素もありますが、アニメ独自を単発的にやって特に継続しないという設定の方が多いです。
単発モノのアニメ独自設定は挙げればキリがありませんが、ネットなどでも有名な雑学だと例えばジャイアンの有名台詞「お前の物はオレの物」には、実は「お前の物も自分事のように大切にする」という良い意味があったという話はアニメオリジナルの範囲です。(「のび太のハチャメチャ入学式」)
トリビアとして盛り上がりやすいからか、TV番組で取り上げられた事もあります。(アメトーク等でアニオリと断りを入れながら紹介)。

ファン、関係者考察:基本非公式だが、格上げ?になった物も。

様々な考察の余地を残す漫画なので、様々なマニア、ファンが隙間を埋める考察をしています。
このブログもその端くれですが、基本的にはファンのお遊びであり非公式な解釈に過ぎません。

ただ、考察本がきっかけで公式に影響を与えたかもという珍しい例もあります。出木杉の下の名前「英才」は初期コミックでは「えいさい」と書かれていたが、「ひでとし」なのではという説が説得力ある説明(息子がヒデヨだし、別F作品で英才(ひでとし)というキャラがいる等)で小学館「ド・ラ・カルト 〜ドラえもん通の本〜」という考察本で紹介されました。この本は藤子不二雄ファンクラブ「ネオ・ユートピア」協力、藤子プロ監修、小学館の専任部署「ドラえもんルーム」名義で出版した本なので、もしかしたらこの説はファンクラブが提唱した説かもしれません。本の中ではあくまで「そうかも?」レベルの提示だったのですが、今はコミック表記も「ひでとし」になり、わさドラでも「ひでとし」と呼ばれるようになり、ファンクラブが公式に影響を与えた例の可能性があります。1

都市伝説:非公式。基本放置だが明確に否定されたり、微妙に関わったり。

長いドラえもんの歴史では非ライセンスの色々な二次創作も生まれており、その中には有名になりすぎて公式と勘違いされる物もあります。有名なものだと2つの創作最終回があります。

1つは「実は全て植物人間ののび太が見た夢だった」という最終回で、もちろん非公式です。こちらはF先生が存命中に広がった噂なのでF先生が直々に「そんな突然で不幸な終わり方はしない」と否定までしています。

2つめは「実はドラえもんの開発者はのび太だった」という最終回ですが、これも一般人が作った二次創作で非公式です。ただこの二次創作の物語部分に着想を得て、ドラえもん要素を抜いて独自キャラで再構築した映画「ジュブナイル」が作られました。ドラえもんと無関係の作品になったものの、元を辿るとドラえもんがきっかけなので揉めないように事前に映画監督と藤子プロの間で話し合いが行われ「for Mr. Fujiko・F・Fujio(藤子・F・不二雄に捧ぐ)」というクレジットを入れる形になりました。なので「ドラえもんとは無関係という事を明確にしたのでこの映画は問題ありません」というスタンスの珍しい関わり方をしています。

他にも完全に創作の都市伝説「タレント」「行かなきゃ」など数えればキリが無いですね。この辺は創作都市伝説として公式とは区別して楽しむ感じですね。

まとめ

という事で、F先生以外にも様々な関係者と積み上げたり、F先生自身が消したり更新したりして様々なレベルの設定が存在します。どれもライセンスされたメディアに登場したならば公式設定の1種ではあり、どのレベルまで受け入れるかはファンの信条の自由だと思います。
という事で人それぞれに正解が違うので、明らかな誤情報は避けつつもそれぞれの考えの違いを楽しんでいきたいです。

なおスターウォーズでは、正史扱いとされるものを「カノン」外伝的なものを「レジェンズ」と呼び分けて公式度を2段階に分けています。ドラえもんも方倉設定とかがレジェンズなのかもしれませんね。

脚注

  1. ※ドラカルトの該当文をファン側(ネオ・ユートピア)と公式側(藤子プロ、小学館)のどちらが書いたのかは不明です。またどちらが書いたにせよ小学館ドラえもんルーム名義で出した以上、公式のチェックを通過した説ですのでただのファン考察とは扱いが違います。
    「えいさい」から「ひでとし」に変わり、その途中にドラカルトがあるという流れを詳しくまとめたファンページがあります。 ↩︎

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