最近よく聞く「映画やドラマを倍速再生などで時短視聴する」という視聴スタイル。一定数このタイプの人が存在し、これに対して肯定派と否定派が意見をぶつけあってますね。
私はほぼ毎週映画館に行っています。なので映画が好きですし敬意をもって接している側なのですが、そんな映画館に毎週通う私でも倍速視聴はアリだと思うし、家で視聴する時は使う事があります。
私が倍速再生(時短視聴)を肯定する理由は2つ。
1.人間の力を信じているから
2.自分を信じてないから
という両極の考えに基づいているその内容を説明していこうと思います。
1.間や緩急は、早見にしても人間は順応できると思うから
まずは人間の力を信じているという理由からです。
倍速視聴否定派がよく言う理由の1つに「それでは間や緩急のようなテンポが味わえなくなる」というものがあります。しかし私は条件次第では大丈夫だろうと思って使っています。
最初から最後までずっと倍率固定(例えば1.25倍)の視聴ならば、人間は順応できると考えてます。情報量の欠損はなく、あるのは情報量の圧縮だけ。間や緩急は、前後の流れから相対的に読み取れるので制作意図をそこまで極端に落とさず見れていると思ってます。
倍速視聴に限らず映画やドラマの視聴時には色々な順応をしているはずです。例えば自宅で昼間に見てても、夜に見ても環境光による色味の違いなんて気にせず内容を楽しんでますし、音量もそうです。また映画館の理想的な環境で3D映画見てた場合ですら、最初は立体に驚くけど後半になるにつれ3Dである事を忘れてしまっているとなんて事もあります。良くも悪くも慣れてしまうのです。そこに速度という新たな変更要素が入っただけだけで、大丈夫これも慣れれます。人間の順応力を信じる!
ただしガチャガチャと途中で速度を変更したりスキップなどを使えば話は別です。あくまで「最初から最後まで一定倍率で早見した場合」に限ります。
実際何度もやっているのですが、感覚としてそこまで間が読み取れないと感じた事はないですけどねえ。元々映画の1秒は現実の1秒と違うことが多いし(爆発まで残り何分!とか)、それが変わっただけという感覚で見れてるつもりです。
2.結局は映画外からも情報補完しちゃうから
こっちは、自分の力を信じていないからという理由です。
時短否定派の主張には「スキップすると、小ネタや伏線などを見逃してしまう」というのもあります。まず同感です。確実に何か情報を失っているのは確かです。
ですが!では映画を等速で集中して見たとして、それ単体で完全にその映画を理解して満足満足。と自己完結できるかというと、私はそうではないのです。
私は映画館によく行くので製作者の意図に近い状態での視聴になっていると思うのでですが、それでも映画視聴単体で完結する事はなく、視聴後に他者の解説や考察、製作者インタビューなど見て情報補完して、それでやっと1本の映画体験が完了するという感じなのです。
映画を存分に楽しむには映画内に出る情報だけでなく、それ以外の周辺知識を持っているかも重要な要素です。「アメリカでは銃は合法」みたいな一般知識もあれば、歴史物なら史実の知識、パロディなら他映画の知識など様々です。これらを事前に全て知った上で見れれば最良なのですが、「あの小道具は聖書からの引用だから裏切りを意味している。」のように映画が好きなだけでは困難なレベルの情報源や、「字幕では○○と訳されていたが、原語□□には別の意味もある」のような学問級のやつもあり、それらを完全に理解できる知識量で初見に挑む事は難しく、完璧に楽しむには何かが不十分な状態で映画を見る事がほとんどではないしょうか。
また上記のような事に映画評論家並の知識で対応できる人でも、それでも事後に補完すべき情報もあります。ネタバレ前提の情報、例えば監督が明かす裏設定であったり制作秘話だったりは事前には仕入れないでしょう。
という事で、「自分の知識量では気づけないネタ」「ネタバレ後に見るべき情報」を補完するために事後の情報収集をするわけです。その際、しっかり見たはずなのに「映画内から読み取れるネタ」の拾いそこねに気づく事が多々あります(そんな小道具映ってたっけ。とか)。残念ながら集中したって全部は拾えてないのです。
時短再生したら映画内のネタの取りこぼしはより増えるでしょう。しかし結局、事後補完作業をするならば、それらはそっちで救えるのです。
という事で、映画体験を本編視聴と情報補完の2つで完結すると捉えたなら、時短視聴すると本編からの情報が減るけど、その分は情報補完の部分が増える事でトータルとしては同じような理解状態になる。という感覚で考えてます。
こんな感じ↓
・本筋…作中から読み取れる話の主内容
・伏線…作中から読み取れる、事前のネタが後半活きるような要素(例:あの時の行動は偶然ではなく、事件解決のためだった)
・小ネタ…作中から読み取れる本筋に影響ない要素(例:キャラのフルネームがチラっと写る)
・メタファー、オマージュ…作中外の別知識が必要な情報(例:○○は現政権への風刺、○○は別作品の引用)
・裏設定…作中には描かれてない物語の補完情報(例:主人公はこんな過去があったとされる)
・制作秘話…作中には描かれてない物語と関係ない話(例:あの特撮はこう作った)
もちろん映画自体から感じるものが多いのが最善なので本筋、伏線は逃したくないですが、まあ小ネタくらいは多少こぼしてもいいかな…という事で「映画と事前知識だけで理解しきれるほどシネフィルではないし」という自分を信じていないゆえの補完作業がある前提の肯定でもあります。
おまけ:本当に筋だけ知りたい時も使う。(思い出し視聴とか)
あと時短再生をフル活用するのは、思い出し視聴ですね。以前に1度見たことある映画を、概要だけ思い出したい時は使います。例えば「往年のシリーズ第7作目が10年ぶりに復活!」みたいな時は、だいぶ忘れている過去作を時短で一気に見てから上映日に挑む。こういう時はよく使いますね。
という事で、映画体験は通常視聴がベストだというのは同感しつつも、倍速、時短ににしても面白さは十分楽しめると思っている自分は使い分けていきたいと思います。
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