ディズニー映画「シュガー・ラッシュ」の冒頭シーンに実在のゲームキャラが多数集まる悪役お悩み相談集会がありますが、その中にストⅡのザンギエフも登場します。他の参加メンバーがベガ、クッパ、Dr.エッグマンといった明らかな悪役達なのでそれらと比べると「ザンギエフは悪役じゃないだろ」と言いたくなりますが、よくよく考えると「ザンギエフを使うのはうまい配置だな」とも思ったので感想書きたいと思います。
本当の悪役は全然話さず、メインで話すのは非悪役のザンギエフという配置。
悪役セラピーのシーンでザンギエフはかなり目立つ立ち位置です。
集まっているほとんどの悪役キャラは一言二言というレベルで、長く話すキャラクターはザンギエフだけ。本人が悪役だと自称します。あとはパックマンの敵役クズタが司会として多少喋る程度です。なぜ悪役の集会なのに悪役度の薄いザンギエフがメインの話し手なのか、そう考えたら見えてくる事がありました。順序立って説明したいと思います。
ザンギエフは悪役ではないが、悪役に見える要素も元々持っている。
まずザンギエフの本来のキャラ設定について。「レスリングによる国際交流を通じたソ連貢献が目的」という設定で、いいやつ側です。レスリングでも別にヒール(悪役)ではありません。
とはいえ強面の大男なので悪役ヅラではあります。また闇プロレス出身という設定や、勝利セリフも「今度会ったら腕をへし折ってやるぜ」「ロシアの大地をお前の血で染めてやろうか」等、粗暴な印象はあります。
スト2は全12キャラをいい感じに善悪に分けようとすると、明らかな悪人(悪の結社シャドルー)は4人と少なく、残り8人から正義属性キャラ(刑事、武闘家、軍人、ヨガ僧者など)を消去法的に抜いていくとザンギエフとブランカあたりが「強いて言うなら悪っぽい」に回されがちで、実写映画では本当に悪役にされてました。
なのでゲーム本編の情報だけで判断すると「悪役なのかも」と解釈するプレーヤーがいてもおかしくなく、悪役っぽい立ち振舞いも違和感の無い善人というポジションです。
実際シュガー・ラッシュの脚本家も「昔ザンギエフを悪役だと思いこんでたから採用した」と言ってますし、カプコン側も「基本善人だけど解釈自由」という非公式コメントがあります。
この映画の基本舞台「オフの時のゲームキャラ」をやれる悪役は少ない。
この映画は、ゲームセンターの閉店後にはゲームキャラ達がオフの時間を過ごしているという世界観で、主人公ラルフは「ゲーム中は乱暴物の悪役だが、ゲーム外の時は悩める気のいいヤツ」という設定です。こういう感じでこの映画の中のゲームキャラはオンとオフの人格を持っているという設定です。
ラルフはこの映画用に作られたキャラだからゲーム中の性格とゲーム外の性格の両方を持っていても、そういうキャラだと受け入れられます。
またソニック等の正義キャラは、オンもオフも裏表なく同じ性格で過ごしているキャラとして描かれています。なのでゲーム外世界の言動も違和感ありません。
しかしベガやクッパ、Dr.エッグマンらはこの映画では「本当の悪人ではなく悪役を演じているだけ」という設定ですのでゲーム外では悪人ではない扱いです。この映画のためにオフの性格が必要になるわけですが、原作ゲームでは悪人そのものなのでもし「ベガは普段は優しいおじさん」みたいな勝手な性格を作ってしまうとキャライメージを壊す事になり、安易には描けないです。実際ベガのセリフは、「(仕事を辞めたいラルフを気遣っているのだけど)まさか逃げ出すつもりじゃないだろうな!」みたいな感じで話していて、セラピー会話なんだけど原作イメージを壊さないセリフ回しをする感じになっています。
その点、ザンギエフは原作ゲームの時点で悪役風だけど悪人ではないキャラなので、「悪役のように見られている粗暴なゲーム中の姿」と「実は普通に話せるまともなやつ」の二面を見せても違和感無く描く事ができるのでこの悪役セラピーで説明セリフを言わせるのに適任なキャラだと思います。
これが、本当は悪役ではないザンギエフが悪役セラピーのメイン話し手として使われている理由なのではないかと思っています。
要は「ガチの悪役キャラにはオフの性格を作りにくい」がまずあって、そのお鉢が回ってきたのが使いやすいザンギエフという事なのかなと思います。
ちなみにパックマンの敵役クズタもザンギエフの次にセリフが多いですが、クズタはゲーム本編では何も話さないキャラなので元の人格イメージというのがそもそも無く、また敵役と言っても悪って言うよりただのお邪魔キャラみたいな奴なのでオフの状態の人格というのを創作しても特に設定破壊にならないからよく話すのかなと思います。
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