藤子スタジオにいたアシ「金田永岩」氏の本名が何なのか調べてもよくわからない件。

ドラえもんの過去調査で藤子スタジオにいたアシスタント金田さんについて正確な情報が欲しくて調べ始めたのですが、確実な情報が見つからない割には変名が何個も登場して迷宮に迷い込んだので調べた事を残しておこうと思います。かなり地味な調査なのですが、せっかく調べかけたのでもったいないので書き残します。

経緯

ドラえもんの約50年前の過去設定で今は風化している「なぜなに新ひみつ50」というのがあるのですが、その絵を書いているのが金田さんです(金田エイジ名義)。いくつか重要な設定が含まれる企画なので金田さんが設定に関わっていたのか、それともF先生や別人が考えたのかを知る上で調査したのですが、本名がわからん!に陥ったので調べたのがきっかけです。
金田さんは1973~75に藤子スタジオにいたアシスタントで、その後も単発的な漫画仕事で藤子不二雄とは繋がっていたとされる人ですが、wikiなどには出てこない非常に情報の少ない人です。

登場する様々な表記達。どれが本名?

金田さんはアシスタント生活中心ですが漫画も描いているのでペンネームも使い分けているはずです。ただどっちが本名でどっちがペンネームなのか断定できる情報が見つからず、一旦全てを列挙してみたいと思います。

金田永岩(読み不明)

一番良く見る表記です。事例を紹介します。

えびはら武司「まいっちんぐマンガ道」
同期のアシスタントえびはら武司のエッセイ漫画の登場人物としてK田永岩とイニシャル登場します。エッセイ中の登場人物は原則本名で書かれているように見えます。、例えば別のアシ「本名:早川正美、ペンネーム羽中ルイ」はH川正美として登場し、「後に羽中ルイと呼ばれる」みたいな説明で描かれます。この法則に乗っ取るなら永岩は本名という事になります。

引用元:えびはら武司「まいっちんぐマンガ道」1

プロゴルファー猿「最終ホール」
ゴルフ参加者一覧がアシスタント名になっているお遊びがあり、そこにも「金田永岩」とあります。他のアシスタントも(方倉が片倉になるなどの誤記はありますが)本名で載っている感じです。

引用元:プロゴルファー猿 文庫版5巻「最終ホール」

新ドラえもん全百科〈コロタン文庫52〉最新ひみつ道具大事典
ドラえもんの道具や設定などの紹介する本で、中の挿絵は複数のアシスタントが描いているのですが、その中の一人「金田永岩」として載っています。他のアシはペンネームだったりするので、ペンネームの可能性もあります。

引用元:1980年7月1日発行 新ドラえもん全百科〈コロタン文庫52〉末尾

藤子スタジオ漫画マガジンQの自作漫画
藤子不二雄両名が、アシスタント育成を意図して作った同人誌です。所属アシや元アシにここへの掲載させる事で自作漫画を描くよう促したとされています。その中で

1977年7月1日発行の2号「たかだ君のラーメン」金田永岩
1978年2月1日発行の3号「宗田君の恋」金田永岩
1978年2月1日発行の3号「とうちゃんは似顔絵屋さん」金田永岩

という漫画をこの名義で描いています。中身は見たことありませんが、漫画家としての金田さんの数少ない例です。他の参加者にはペンネーム者もいるのでペンネームかもしれません。

永岩の読みについて

永岩の振り仮名は見つけられませんでした。なんて読むのでしょうか。「えいがん」でしょうか。一般的な人名としてググってもこういう名前はひっかからないし、名字「ながいわ」とか、寺名「永岩寺(えいがんじ)」とかしかなく、正直本名っぽくないなと思えます。

という事で一番登場するこの名前、アシスタントの本名っぽいシーンでも登場するけどペンネームっぽくもあり、どちらなのか不明です。

金田永治(かねだえいじ)

小学四年生1976年1月号の特別企画「ドラとバケルともうひとつ」で、F先生が出すお題にアシスタントらがネタ披露する大喜利みたいなコーナーがあり、金田さんの投稿があります。そこでは「金田永治」となっています。2ネタ載っておりどちらも同じ表記ですので誤記などではなさそうです。

引用元:藤子・F・不二雄 大全集 ドラえもん20「ドラとバケルとあとひとつ マンガワークブック」

ふりがなが振られているのではっきりと「かねだえいじ」である事が読み取れます。私はここでしかこの表記を見つけられていません。

金田エイジ(読み不明)

1980年7月号コロコロに特別企画「ドラえもん なぜなに新ひみつ50」という秘密紹介系のコーナーが掲載され、監修は藤子不二雄ですが「カット:金田エイジ」とあり、絵を担当したと思われます。ふりがなは振られていません。カタカナですしペンネームの可能性が高いです。

引用元:1980年7月号コロコロコミック「ドラえもん なぜなに新ひみつ50」

金田を「かんだ」と呼ぶ事例

えびはら先生のyoutube動画で「かんだ」呼びする例がありました。
同時期の藤子スタジオの元スタッフ松原由紀子からの手紙を読む内容で、自筆は映らないですが字起こし表示と、読み手アシスタントの読み上げがつきます。
序盤は「K田」「M原」とかイニシャル表現なのですが、後半から「金田」「松原」と本名そのままになります。読み手はそのまま読み進め、字起こしは「金田」で、読みを「かんだ」として何度も話します。えびはら先生は適宜「K田」と言い直して本名は言わないのですが、否定もしないという状態です。

ただこれは読み手が読み違いしているように思えます。まず金田の読みは色々ありますが「かんだ」という読みは無く単に間違えている気がしますし、建前上イニシャルトークを守るえびはら先生も「かんだ」が間違っていても「『かねだ』だよ」と言えなさそうなので間違えを流しているのかなと。

整理、まとめ

様々なパターンを列挙しましたが、どれが本名ででどれがペンネームなのか?という点について推測していきます。

名字「金田」(かねだ)(かんだ)

まずは簡単そうな名字から。表記は金田で決まりですが、読みが「かねだ」「かんだ」の2種類が存在しました。ただこれは「かねだ」でほぼ間違いないでしょう。
「かんだ」読みはイニシャルトークの一部に登場するだけだから、間違って発言しているだけに見えます。

下の名「永岩」「永治」

下の名前がどちらなのか。頻発するのは「永岩」ですが、響き的に本名っぽさがあるのは「永治」です。
「岩」と「治」は形が似てますので、どちらかが本名で、文字を崩してペンネーム化しているのだろうなと想像します。
考えられるのは

説1:本名は永治(えいじ)。ペンネームでは治を岩をしてみたり、本名の読みのままカタカナ化してみたりと色々といじっている。

説2:本名は永岩(読み不明)。ペンネームでは名前をいじって永治(えいじ)としたり、それをカタカナ化してエイジとした。

という感じかなと思いますが、やっぱり本名が「永岩」というのは日本人名として考えにくいので、説1の永治なのかなあと想像してます。

なので、個人的に推測では、一番可能性が高いのは本名は「金田永治(かねだえいじ)」なのかなと思います。

おまけ:人となり等。

名前とは関係ないですが、調査の過程で分かった事を残します。
同時期のアシスタントえびはら武司先生がいくつかの箇所で金田さんの事を話しています。
エッセイ漫画「まいっちんぐマンガ道」1巻では「K田永岩」として登場し、やさしい顔つきのメガネの長髪の人として描かれます。「器用でやさしい人。履かなくなったズボンを改良してカバンにして持って歩いていた」との説明だけ登場し、具体的な個人エピソードは出てきません。
また巻末の年表には「えびはら入社の1973年8月時点ですでに在籍、1975年4月に退社」その後「上野公園の売店に紹介するが3日でやめてしまった!」との紹介もあります。この本の情報は以上です。

またえびはら先生のyoutube動画でも金田さんに触れています。
そこでは、「漫画家になるという熱意がほとんど無い人で、絵を描くのが好きな人。皆のために生きているみたいなすごくいい人」「結局漫画家にならずに運送会社のお手伝いをしながら最終的に田舎に帰った。」と語られています。
またその中では2020年1月に亡くなられていると話されています。

人となりとしてはこんな感じの情報なので、私の知りたかった「なぜなに新ひみつは絵だけの参加か、アイデア出しにも協力したか」の観点で言えば、時期的にスタジオ退社後の単発仕事だった事と、漫画家としての熱意の観点から推測するに、絵だけの参加だと思われます。

終わりに

という事で、かなり地味な調査内容でした。しかも真実には到達できていない。これはちゃんと追いかければ答えがあるやつなので、どこかで手に入れたいです。えびはら武司先生に質問できれば一発で解決できるんですが…。いつか解決したらいいなと思ってます。

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