ドラえもん映画は定期的に旧作をリメイクしています。「のび太と竜の騎士」はリメイクされるのでしょうか。結論から言うと課題が多くリメイク順序は遠い。考えようでは部分リメイク済とも言えると思います。その理由について説明します。
リメイクが難しいと思われる要素
まずはリメイクに厳しい要素から挙げていきましょう。
クライマックスに大津波シーンがある
困難レベル:☆☆☆☆
今作のクライマックスは、地底人が地上を追いやられた原因は巨大隕石だったと判明するシーンです。実際に隕石が落下し大津波が発生。木々や動物は流され一面は荒野となります。
2011年の東日本大震災以降は津波描写には慎重になる必要があり、大破壊シーンをそのまま描くのは大変厳しいと思います。
改変で乗り切れるといいのですが、この隕石衝突の大津波はフィクション設定ではなく有力学説を元にしたシーンであるため、全く別のものに差し替えるのは難しいです。(台風とか噴火とかにはできない。)
津波描写を避けるやり方としてのび太の新恐竜でもやっていた「隕石衝突の影響を津波ではなく衝撃波で表現する」という方法はあります。しかしそれをやれば後述する「ネタかぶり」問題が出ます。
「のび太の新恐竜」後半の展開が、竜の騎士のネタに酷似
困難レベル:☆☆☆(少なくとも年数経過が必要)
2020年作品「のび太の新恐竜」は、「のび太の恐竜」の要素を多く持つ半リメイク作品ですが、実は「竜の騎士」からもネタを流用していると思われる部分もあります。
それは物語後半部で、
・恐竜時代で、恐竜絶滅の原因である巨大隕石衝突の瞬間に立ち会う事になる。
・衝突の影響で恐竜絶滅は免れないが、できる範囲だけでも恐竜達を助けたいという思いで行動する。
・できる範囲で恐竜を助け、ドラえもん達の作った特別な隔離場所に住まわせてあげる。
・その中の一部の種は恐竜とは別の進化(鳥)して現代まで生き残る。
という内容です。地底人は出てきませんし進化の先は大きく違うのですが隕石、恐竜助ける、進化といった要素が同じです。もし竜の騎士を近年中にリメイク公開すれば、「前にも見たことある」という感じになってしまうでしょう。これがしばらくはリメイクできない理由になります。
評価面では温度低め。刺さる人が少ない印象。
困難レベル:☆☆
作品評価は温度低めという感じでしょうか。定番の型を外れた初期の作品という感じで挑戦心に溢れ、当時盛り上がった学説ディノサウロイドをモチーフにしたり謎解きっぽい感じが面白いものの、「ゲストキャラが怖い系デザイン」「悪人がいないので戦闘シーンが弱い」「野望を打ち砕くような話ではなく、災害事後処理でスカッとしない」といった地味めの印象のある作品です。
たとえ評価が低くても「賛否両論。刺さる人には刺さる」みたいな作品もあり、そういう作品は監督のプッシュなどで作品化する可能性もありますが、この作品においてはみんなが平均的に「まあまあ ~ いまいち」の間に収まっている印象です。
yahoo映画のF先生原作の映画ドラえもん17作の一般評価では下は3.4(ねじ巻き都市冒険記)、上は4.2(鉄人兵団など)の範囲ですが、竜の騎士は3.7で、低めの評価にあると言えます。
この温度感だと、リメイク意欲も弱そうです。
スカッとしない展開(敵を倒せず事後処理)
困難レベル:☆☆
ドラえもん映画の定番の物語展開は「異世界に行き、ゲストと出会い、敵を倒す」ですが、今作は敵がおらず、強いていうなら隕石が敵となります。
しかしその隕石に対しても基本やられっぱなしで、災害後の復興支援しか実施されず「何かの脅威を乗り越えた」感が薄いです。
同じシチュエーションがある「新恐竜」は、この部分の盛り上がりは強化されています。
・破壊後の事後処理ではなく、「衝撃波の到達前に救出する」として時間的緊張感を出す。
・救出を間に合わせるにはゲスト恐竜キューの飛行能力が必要で、まだ飛べないキューが飛べるようになるのかどうかという所に盛り上がりを持ってきている。
こういった要素がないとどうも地味さが残ります。
敵味方とも甘咬み戦闘
ドラえもん映画に定番の戦闘シーンは今作にもありますが、ゲストキャラでもある地底人との戦いで、悪人との戦いではないのでどこかヌルいです。
ドラえもん達は地底人を地上制服を企む存在と勘違いし、その過程で戦闘になります。序盤は優しくしてくれた相手なのでドラ達の行動がいつもの「征服者だ、倒そう!」にはならず「脱出して救援を頼もう」になり、やむを得ず戦闘になった際にもこけおどし手投げ弾などの無傷の道具しか出しません。ショックガンや空気砲は出ないのです。
地底人側ものび太達を敵勢力とは見ていないため、「計画を邪魔されないように捕縛したい」程度の対応です。双方に本気さの無い甘咬みの戦闘なんですよね。しかも途中で隕石が来てノーゲーム。
風雲ドラえもん城とかのアイデアは面白いんですけどね。でもこれも今じゃ通じないネタだからリメイクの小さな障壁かもしれません。
リメイクにプラスの要素もあるが…
下記に挙げるのはリメイクにプラスの要素です。
収益:310万人は当時では健闘した成績。
興行成績の面では竜の騎士の動員数は310万人。F先生原作の映画17作中10位です。高いわけではないものの、前後の公開と比べても高いので当時の基準で言えば十分良い成績です。すでにリメイクされている作品達で最も低いのだと宇宙小戦争240万人というのもありますので、十分な成績だと言えます。
順番:初期から順にリメイクされやすいと考えると残り2番目なのだが…
リメイクの順序には特に法則性はないのですが、比較的初期の作品からリメイクが進み、最も離れた作品で9作目「のび太の日本誕生」までは手が伸びています。日本誕生より前の作品でリメイクされていないのは4作目「海底鬼岩城」と、この8作目「竜の騎士」の2本だけです。その観点ではあと2作以内にやってもおかしくない位置にはあるのですが…それより後期の作品を先にリメイクする事もあるのでリメイクの有望度の根拠にするには弱いというのが正直な所です。
終わりに
総評すると「悪い作品では無いけど、推す材料が少ない」という感じです。困難の理由を整理してそれを回避しようとすればするほど「新恐竜」に近くなっていく感じがしました。新恐竜脚本の川村元気氏のインタビューを見ると、竜の騎士についても言及があり「竜の騎士は当時の学説に添って恐竜絶滅とした展開だったが、最新の学説では鳥に進化したという風になり、そういった点を物語に落とし込んだ」といった旨の発言があり、竜の騎士の要素を現代アレンジしたとも取れます。
「新恐竜にネタ使われてしまったから竜の騎士リメイクが困難になった」と考えるより「竜の騎士の単体リメイクは難しいと判断され、ならばせめて使える要素だけでも新恐竜という形で組み込むようにした」と考えれば竜の騎士は有効活用されたとも言えます。
「リメイク困難」ではなく、「形を大きく変えてリメイク済」と考える事もできるかもしれません。
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