ドラえもん映画は定期的に旧作をリメイクしています。「ブリキの迷宮」はリメイクされるのでしょうか。結論から言うとリメイク候補3〜4位くらいの位置づけにいるのではと思っています。その理由について説明します。
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リメイクに有望な要素
まずはリメイク有望な要素から。
評価面では高い。「自立」というテーマ性が刺さる人には刺さる作品。
作品評価は賛否両論あるものの、比較的高い方です。
好評側の意見としては「ドラえもん最終回にも通ずるテーマ性」「のび太達が自らの力で事態を解決する点が良い」といったものが多いです。一方で不評側の意見は「ドラえもんの活躍が少ない」などがあります。
今作のテーマは自立。「便利な物に頼りすぎると何もできなくなる」で、これはドラえもんとのび太の関係性ともリンクするとても重要な要素です。
yahoo映画のF原作の映画ドラえもん17作の一般評価では下は3.4、上は4.2の中で、ブリキの迷宮は4.1で、高い評価にあると言えます。
「機械に隷属する人間」はうまく描けば現代的なテーマに。
今作のメイン舞台チャモチャ星が抱える問題は「機械に頼りすぎて何もできなくなってしまった」で、便利な機械と人間の関係性はどうあるべきかを考えさせられるテーマ性を持っています。
現実世界でもスマホやリモート作業など便利になっているはずなのに余計に忙しくなったりストレスが多くなっている問題や、生成AIの登場で仕事を奪われていくなど、機械と人間の幸せな付き合い方を考える事が多くなっており現代的なテーマと言えます。
このテーマ性はクリエイターを刺激しそうです。こういう所に目をつけた監督がうまく膨らませて「やらせてください」と候補に挙げる可能性はありそうです。
時世的に描きにくい要素は見当たらない
内容がおもしろくても、時世的にやりにくい要素があるとリメイクの障壁となります。現在ですと津波、放射能やウィルス感染症などです。
今作にはそういった要素は見当たりません。メインゲストのサピオ君がほぼ歩けない人で、それを良くない事と描いているのも車いすの人への配慮がいる時代かもしれませんが、体力低下の表現なので気を使って描けば大丈夫でしょう。総合的に見て大きな障壁は無いと思われます。
収益:330万人は歴代7位。高い数値だが下り坂の時期。
興行成績では動員数は330万人。F原作映画17作中7位です。十分高い数値であり問題ないと判断できます。
ただ、日本誕生のピークから年々下がり続けており、「過去数年の人気に支えられている時期」とも言えるので絶対値だけでは判断できない部分もあります。
これらの事から、収益、人気も高く作家性もあり、明らかな障壁も見当たらないのでリメイクの候補としては高い方だと思っています。
リメイク時に補強が必要になりそうな要素
一方で、リメイク時になんらかの補強、対応が必要な要素もあります。
テーマ的にひみつ道具を活躍させにくい。突き詰めるとドラえもんとの別れにも。
この映画のテーマは「依存しない。自立」です。
序盤で何でも頼るのび太に対し、ドラえもんは「道具にばかりたよっているとダメ人間になる」と釘を刺します。そして末路を象徴する存在として機械に頼りきった結果自分では何もできなくなってしまったチャモチャ星人が登場。彼らを助ける事を通じて自立を描いていくわけです。
なので「道具に依存せず自身の力で解決する」が重要になります。
実際、作中のドラえもんは機能停止してしまいのび太達の力でなんとかしないといけない状況が設定されており、ドラえもん復活後も支援は控えめで「絶対安全救命いかだ」のように身の安全は確保するけど自力で漕ぐ必要がある等、自立を促す道具を登場させています。
チャモチャ星人も同じで、事態が解決し機械文明が崩壊した後チャモチャ星人は自らの手でやりなおすと宣言し、ドラえもんも「便利な道具で元通り」のような事をあえてしません。機械文明が招いた問題を、機械で解決しては意味がないという事なのでしょう。
このように自立を意識した話なのですが、テーマに忠実であろうとするとひみつ道具が活躍しにくくなり、ドラえもん映画らしい見せ場が減るという構造になっています。
またこのテーマをさらに突き詰めると道具どころかドラえもんに頼らずやっていくテーマに行き着くので、最終回「さようならドラえもん」にも通じる内容となっています。そこまでやっちゃうと最終作っぽくなるのでさじ加減が難しそうです。
なお旧作では見せ場や娯楽要素も入れた結果、テーマ的に半端になっている部分もあります。
・迷宮攻略は「迷路探査ボール」「ぬけ穴フープ」でいとも簡単に攻略しています。ドラえもん復活後の最初の活躍なので役立ち感を出す意図なのでしょうが、「便利な道具に頼る」が出てしまっている状態です。この辺はテーマと矛盾している感じです。
バランスが難しいですが「道具の全否定」ではなく「人間の意志を手助けするもの」としての道具を中心に描く事で、文明の利器と人間の正しい関係性を描きつつ、ドラえもん自体もそういう道具の支援者であり、何よりも友人であるという所を描けば「ドラえもんから別れる」の結論にならずに済みそうなので、そういう改変を期待します。
タイトル詐欺?そんなに重要ではないラビリンス
「ブリキの迷宮」というタイトル、正直タイトルにするほどの主役感がないと思います。
作中の扱いとしては、ブリーキン家の先祖が趣味で作った施設で現在は研究所として使用、チャモチャ星を救うキーアイテムであるディスクの保管場所でした。
それなりの役割はあるもののメイン舞台はチャモチャ星の方で、あくまで途中の施設です。
また迷宮要素について。自力クリアした者がいない難攻不落の施設という設定ですが「この攻略が映画の見せ場」のような盛り上がる冒険要素があるわけでもなく、作中2回ある攻略シーンは1回目でいきなりガイドマウスを使う他力展開の上に途中で壊れて断念、2回目はひみつ道具で楽々と攻略するチート展開で、タイトルにするほどの盛り上がり要素は無いです。
個人的には「迷宮の攻略」というのを「自力で解決する事の象徴」として描いてくれたならば作中テーマと一致していいのではと思っています。リメイク時にはひみつ道具ではなく自力で攻略して欲しいし、タイトルに据えるからには迷宮攻略を物語の最重要になるよう描いてほしいと思います。
余談:タイトル詐欺と言えば「のび太の新魔界大冒険」は旧作にあった魔界星の冒険シーンがごっそり省略されており「魔界を大冒険していない」という指摘を受けていたりします。
「ナポギストラー」のネーミングは大丈夫?
困難レベル:☆(そのままやりそう)
今作の悪役はチャモチャ星の独裁者となったロボット「ナポギストラー1世」です。このネーミングは「ナポレオン」「チンギス・ハン」「ヒトラー」という歴史上の支配者達から取っている説が有力です。悪の独裁者キャラを実名モチーフにするのは「新作ならやらないだろうな」という程度のセンシティブさはありますが、ナポレオンやチンギス・ハンは大昔の人なので大丈夫でしょう。ヒトラーは現在でも茶化すには気を使う存在ですが、別に礼賛しているとかではないですしストレートなネーミングでも無いのでそのままやる気がします。
終わりに
テーマが魅力的でやりがいのある作品。興行、評価は高く障壁少ないのでリメイク候補としては高いと思いますが、一方でドラえもん卒業の物語とも言えるので、単なる途中の一作として描くには重いという要素があります。
大幅なアレンジを入れてもいいので、ぜひともリメイクして欲しいと思います。
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