映画アニゴジ三部作(怪獣惑星 / 決戦機動増殖都市 / 星を喰う者)の感想です。ゴジラ映画は全作見ている自分ですが、手短に感想をまとめると「こんなんが見たかったわけではなかった。しかし珍味感があり嫌いじゃない」という感じです。
私が今作で「なんじゃこりゃ」と思う所でもあり、一方で愛すべき場所でもある所を挙げていきます。
ターン制で戦いに挑むイケボだらけのディベート大会。
今作はとにかくセリフが多いです。地球人、科学至上のビルサルド人、宗教的な思想のエクシフ人という宇宙人が互いの主張をしながらも共闘。さらに地球の原住民フツアの4勢力が出てきて、全キャラが実力派の超人気声優で固められていてイケボの洪水です。
そんな彼らが、ゴジラの倒し方をあーだこーだと話し合う朝まで生討論が続き、ゴジラとのバトル以外はほとんどディベートなんじゃないかという勢いの映画です。バトルが始まってもしゃべり通していて、基本的には3作とも「作戦検討。イケボの討論会」→「バトル開始。イケボの実況中継」というのを繰り返します。
地球人「人類の叡智と勇気を集結させれば勝てる!」
→デカいのには無理でした。
ビルサルド「自らも人間を捨てて怪獣並になる事で勝つ!」
→失敗しました。
エクシフ「この世の力では無理だ。神の力で倒すのだ」
→失敗しました。
フツア「あれは自然災害みたいなもの。やりすごすしかない」
という感じで、1作目、2作目、3作目とそれぞれの勢力がそれぞれの打倒法を主張して、実際やってみては失敗するというのを繰り返す展開が続きます。
まるでオタクの飲み会のようなゴジラ論を語るイケボ達。
基本的にはゴジラの倒し方を話し合う3者ですが、時おり「そもそもゴジラとは。怪獣とは」という観念論を話し合い、それがまるでゴジラオタクの飲み会のように見えてなんとも言えない味わいを出していきます。ちなみにこの観念論、バトル中でも容赦なく挟み込んできます。
地球人「ゴジラは核実験の産物。人類の過ちの象徴。」
ビルサルド「いやむしろ偉業。人類が次のステージに進化するための試練だ」
エクシフ「いずれ滅びる人類が生み出すのは当然の帰結。最終段階に来たのだよ…」
フツア「(だから自然災害だって)」
全員が小難しく説明して、しかしイケボゆえに謎の説得力があるという不思議な討論会。口論しているように見えてなんかキャッキャウフフしている感じがなんとも味わい深いです。
回を増すごとに絵が止まる怪獣バトル。プロレスは無く、あるのは将棋中継。
ゴジラ映画である以上、ゴジラとの戦闘が楽しみなわけですが、回を増すごとに普通の戦闘では無くなっていき「セリフバトル」と化していきます。
1作目:アニメならではの戦闘シーンも見れて、一番まともな感じ。
1作目はまともな戦闘があります。空中バイクやパワードスーツを使った人間vsゴジラのスピード感ある戦闘は実写特撮には無いアニメならではの見どころがありました。戦闘中の会話も作戦指示が中心で、ちゃんと絵で見せてくれる戦闘になってました。(それでも通常のゴジラ映画よりは説明台詞多いですが、後の2作を思えば可愛いものです)
2作目:動きの少ない、昔のRPGのようなパラメータバトル
メカゴジラ出るのかと思いきやメカゴジラシティという要塞都市が戦う展開。ゴジラvs要塞というアイデアは面白いのですが、いかんせん要塞なので動きがありません。実際の所やっているのはひたすら砲撃、砲撃、砲撃。ゴジラも途中から足場を固定され静止して、動かないもの同士の戦闘という状態になります。なので絵からはほとんど優劣が伝わらず、要塞側は「○○区域が破損!」みたいな実況報告でダメージレベルが伝えられ、ゴジラ側も体内温度やら電磁波レベルやらの数値報告でダメージを判断する感じになります。
なんというかファミコン時代のドラクエというか、動かない一枚絵に対して「人類は砲撃をした!ゴジラのシールドが80%に消失!」「ゴジラは体内温度を上昇させた!要塞に○○の温度ダメージ!」というセリフ説明で戦況が進むパラメータバトルな感じです。せっかくのアニメなのに動きのダイナミックさはなく、イケボ実況中継を楽しむのみとなります。
一応、動きのある存在として飛行ロボットは出るのですが、メインのゴジラ達はほとんど静止しているのでやっぱり全体としては地味です。
3作目:異次元将棋中継
問題の3作目です。ついにギドラが現れ怪獣同士の戦闘になるのですが、これまた動きのほとんど無いバトルです。ギドラがゴジラに噛みついてチューチュー吸うだけの映像が続きます。
そこに今回もセリフ実況中継が入るわけですが、2作目よりも特殊な説明方式になっています。
メカゴジラシティの時は「セリフばっかりだけど、言っている事は視聴者にもわかる理論(高熱だからヤバい等)」の実況中継でしたが、今作のギドラは異次元から来た存在で通常の物理法則とは違う攻撃をする怪獣として登場するので、「虚数だ特異点だといった視聴者に理解できない用語羅列でオペレータが状況報告、それをやたら的確に解釈する学者の驚き具合で戦況の優劣を判断する」というなんとも奇妙な実況中継が繰り広げられます。
なんというか「初心者が将棋中継を見て、譜面映像とアナウンサーの「3二成桂」という理解不能用語をポカンを聞きつつ、解説者の「これは追い詰められましたねえ」のコメントからなんとなく優劣を判断する」みたいな気分になる戦闘です。
終わりに
今作はとにかくセリフだらけで、3作目なんて「もう会話だけなら身振り手振りもいらんでしょ」と割り切ったかのごとく、スクリーンセーバーみたいな抽象画面でひたすら会話だけ進むという所まで言ってしまいました。
「アニメなんだから、絵で見せて絵で!」という気持ちと、全体の話としてもいまいちノレない内容で、評価としては全ゴジラ作品の中で下から数えた方が早い部類にはなってしまいます。しかし何十年と続いたシリーズが生み出したこじらせ作品として他にない独特のテイストがあり、ゴジラのテンプレ作の中の不出来なヤツを見るよりは見どころがあるとも言えて嫌いにはなれない一作ではあります。
「虚淵玄だもんね」という内容にはなっているので、変に無難な作品を作られるよりは正しいのかもしえません。今作が小説かビジュアルノベルゲームとしてリリースしていたら評価は違ったのかなと思います。媒体が悪かったという印象です。
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