ドラえもん映画は定期的に旧作をリメイクしています。「のび太のドラビアンナイト」はリメイクされるのか?結論から言うと可能性は「中」。やるとしてもまだまだ先と思ってます。この作品だけが持つ魅力が同時に弱点でもあるという印象でそれを説明していきたいと思います。
リメイク向きな要素
砂漠の舞台は珍しく、ネタかぶりの心配はない
ドラ映画は長いシリーズのため宇宙、太古、海など舞台が何度も重複しています。類似舞台が連続にならないよう注意が払われていて、リメイク作も「去年あの舞台でやったから被らないやつを」という理由で先送りにされる事も十分考えられるわけですが、その点ドラビアンナイトの砂漠の世界は重複が無く、いつでもできるという扱いやすさがあります。
最初からシリアスな目的がある珍しい作品。序盤から掴みが強い。
映画ドラえもんの多くは、最初はただのワクワクの冒険でスタートして途中から危機に巻き込まれていくというパターンですが、今作は「迷い込んだしずかちゃんを救出する」が目的で、アラビア世界に行く前の時点でもう緊迫感のある珍しい構成になっています。序盤から中盤まで常に緊張感がある話です。
リアルな過酷さのある苦難を乗り越える物語が魅力的
今作特有の要素として「リアルな困難を、リアルな力で乗り越えていく」というものがあります。砂漠の灼熱や砂嵐といった現実レベルの過酷な障害を、道具を失ったドラ達が小学生の体力で乗り越えていくという物語展開は他の作品のような「未知の脅威を、ひみつ道具で解決していく展開」とは一線を画す内容で、この作品だけが持つ魅力と言えます。熱中症や水不足といった現実的な苦難は命の危機を身近に感じますし、全員がキツい中で倒れたのび太を背負うジャイアンなど、男気溢れるシーンなどもあり見所あります。
動員:360万はかなり高い。しかし時期が良かった面もあり。
動員数は360万人4位。これだけ見ればリメイク有望なポテンシャルがあるといえます。ただ前々年までが好調で旧2作の勢いに乗っている部分はあるので鵜呑みにはできないです。とはいえこの数値にネガティブな要素はないでしょう。
リメイクに厳しい要素
リメイクする上でのウィークポイントも挙げていきます。先ほど挙げた魅力を裏表にしたような弱点も多いです。
ドラ映画の王道構成なのだが、構成要素が地味。
ドラ映画の定番といえば「異世界に冒険に行き、ゲストキャラと交流し、敵を倒す」というもので、今作もそれに沿った王道構成です。なのですがその各要素が地味です。それぞれを説明します。
地味な前半舞台
前半舞台は異世界ではなく現実のアラブ世界で、リアルな時代描写が魅力でもあるのですが、砂漠のシーンが大半で殺風景な舞台が続き、脅威も砂嵐や水不足といった現実的なものが続きます。後半からは黄金宮が登場し多少ファンタジックで派手な展開になっていくのですが、それまでがいかんせん地味です。
地味なゲストキャラ
今作のメインゲストは船乗りシンドバッド。アラビアンナイトの物語では大人気の登場人物なのですが、今作では隠居中の小太りおじいさんとして登場するため同世代キャラのような感受性の高い交流シーンはなく、活躍も最後しかないため地味な存在です。
マスコット的ポジションに案内人ミクジンがいるのですが、これも途中退場して登場は限定的で交流らしい部分はないです。
地味な敵
今作の悪役は奴隷商人アブジルと盗賊カシム一味。財宝を狙う単なる小悪党4人でドラ達の脅威として立ちはだかるには小粒です。実際ほとんど道具を使わずにやっつけています。
また敵が一枚岩でなく経緯や目的が微妙に異なる2種の悪党が結託した状態なので、悪役のフォーカスがどこかボヤけています。
実際この2悪はどこか成り行き任せなんですよね。カシムはバグダッドでの逮捕を逃れるために仕方なく国外脱出した盗賊で、大嵐で何もかも失ったので黄金宮に望みをかけるという感じで最初から目指していた感がありません。
アブジルは最初から黄金宮を目指してはいるものの、当初目的は金持ちのシンドバッドに奴隷を売りつける事で、最初から乗っ取りを予定していたかは不明です。途中で奴隷(しずか)を失ったのとシンドバッドに冷たくされた事を根に持って黄金宮乗っ取りを始めるわけですが、そういう感じで成り行きで襲ってきた敵を追い払う話でなんかモチベーションが弱いです。
道具封じの先駆け。ドラえもんらしい道具の活躍が少ない。
今作前半の脅威は大嵐、灼熱の砂漠、砂嵐といった現実的なものです。ひみつ道具があれば余裕で解決できるレベルですが、今作ではポケットを奪われた事で道具が使えない設定になっており生身で解決しないといけない状況になります。このスリルが今作の魅力ではあるのですが、「危機的状況をひみつ道具で見事に解決」というドラえもんらしさは減っています。今作は道具封じの先駆けで、以後も道具が使えなくなる映画は多数作られているのでリメイク障壁と言うわけではないですが、地味さに拍車をかけている要素ではあります。
後半が消化試合気味。のび太達の活躍もかなり少ない。
今作はしずかちゃん救出が目的でアラビア世界に行き、それが前半~中盤の緊迫感を生むというのをメリットとして挙げましたが、しずかちゃん救出は中盤で達成されてしまいこの時点でエンディングにできる状況になっており、そこから先は消化試合感があります。のび太達はシンドバッドと黄金宮満喫という後日談的な話の展開になり、そんな感じでノンビリしている内にアブジル一行が黄金宮を乗っ取ってきて、それらを追い払うために戦う事になります。その戦いもドラが多少機転を利かせる程度でのび太達はほとんど戦う事なく、シンドバッド任せとなりクライマックスの盛り上がりが弱いです。
客観的な評価は「可もなく不可もなく」
yahoo映画のF原作の映画ドラえもん17作の一般評価では真ん中の3.8です。可もなく不可もなくというレベルです。
まとめ。消去法的にいつか巡ってくるかもしれないが…
総評すると「王道構成で魅力的なシーンもあるが、全体的に地味。新作を押しのけてまでやる勢いは薄い」という感じです。つまらないわけでは無いのでリメイク絶望でもないのですが、積極的にリメイクする作品という感じも無く、遠い順番かな…というイメージです。
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