ドラえもんの誕生日が2112年9月3日で22世紀から来たのは有名な設定です。しかし初期設定では21世紀出身でした。初期はどのように描かれていて変わっていったのかまとめました。また「昔は2012年生まれ設定だった」という誤情報についても説明したいと思います。
連載1話は「111年後」という設定。2081年に相当。
ドラえもんがいつの未来からやってきたかは第1話からハッキリ示されています。それは「111年後」です。
セワシ「みらいのせかいから。」
引用元:小学二年生 1970年1月号 ドラえもん第一話「未来から来たドラえもん」(ドラえもん0巻より)
のび太「みらいのせかいだって。」
ドラえもん「111年あとのせかいからさ。」
セワシ「ぼくは、きみのまごのまごだよ。」
これは掲載時の1970年で換算した場合2081年(21世紀後半)から来た事になります。単行本第1話とは違う別バージョンの第一話なのですが、今でも「ドラえもん0巻」(第1話のバージョン違い全収録の資料性の高い本)で読めます。
第1話は孫の孫セワシがやってくる所から始まりますが、それくらいの未来を意識しつつキリのいい数値として111年後と決めたのかなと想像します。
111年後に同い年の孫の孫がいる状態は、111÷4=27.75歳で各世代の子が生まれる計算でちょうど良い感じです。(1970年男性の平均結婚は26.9歳)
初期5年は21世紀、22世紀のセリフが混在の「2100年前後」
第1話で「111年後」の台詞が出たものの、それ以降登場しません。未来をざっくり「21世紀」と言うシーンは何度も登場します。
1970年4月「のぞきお化け」:「21世紀の小学生の間ではやっている~」
1970年7月「古いものは、もういやだ」:「21世紀では古どうぐのコレクションが~」
ただ「22世紀」と言うシーンもありまして
1970年2月号「愛妻ジャイ子!?」:「ぼくらのすんでいる22世紀になると~」
1970年2月号「ドラえもんの大予言」:「22世紀のマジックハンド」
第2話からこの調子でいきなり111年後設定と矛盾しますが、単に定まってなかったのか誤記なのか不明です。
まあ初期は「111年後、21世紀とあるから基本21世紀後半だろうけど、そんな厳密な設定ではなかった」くらいだったのかなと。「孫の孫がいるくらいの未来。21世紀なら後期、22世紀なら初期の「2100年前後」という感じでしょうか。
連載開始5年後の特別企画で22世紀に変更。ドラの身長が関係。
1975年4月号に「ドラえもん大事典」という各種秘密を紹介する公式企画にてドラの誕生日が2112年9月3日と決定。「2112年生まれ(22世紀出身)」に更新されました。以後この設定が守られ今に至ります。
引用元:小学四年生 1975年4月号 「ドラとバケルともうひとつ ドラえもん大事典」
なぜわざわざ22世紀に変更した?
111年後設定をなぜ22世紀に変更したのか?関係者の話等は聞いた事ありませんが、「129.3統一設定」の影響だと思われます。この「ドラえもん大事典」は今まで描かれてなかったドラの各種設定を明確化する企画で、身長、体重、生年月日といった設定値が一気に決まりました。それらは全て「129.3」に揃ってます(身長129.3cm、体重129.3kg…)。数字の由来は諸説ありますが一般に「当時の小学4年の平均身長129.3と同じにした」であるとされ、まずは身長が決まりこの値を他のスペックにも統一的に当てはめたと考えられてます。
1293を生年月日に適用しようとした場合、2100前後にはめるなら2112年9月3日とするしかありません。孫の孫設定が苦しくなるのですが(平均世代年齢36.75歳)、まあ許容範囲と判断されたのではないでしょうか。なので、強い意図で22世紀に変えたというより、孫の孫がいるくらいの遠い未来という設定が129.3統一設定に引っ張られ、それなりに辻褄があってたので2112年(22世紀)に設定変更された、て感じではないかと思います。
誕生日が変わった事は無い。
設定変更の流れは「初期は出発年(2081)だけが設定されていた」→「後に生年月日(2112)が設定され、出発年も変更された」であって、誕生日が変更されたわけではありません。誕生日は2112年9月3日と最初に定められてから以降一度も変わった事はありません。なので「途中で誕生日が変わった」という表現は誤りです。
なお、生年月日が設定されてからは出発年は2122~2125年あたりだと読み取れるのですが明確な日は定まっておらず、振れ幅があります。まあなんにせよ22世紀ですね。
ネットの誤情報「最初は2012年だった」について
という事で、ドラの来た未来が21世紀(2081)→22世紀に設定変更されたのは事実です。
しかしネット上では「当初は誕生年が2012年だったのが、途中で2112年に変更された」と説明しているブログ記事等がいくつか見られます。それっぽい理由で「連載が進んで年代が追いついて来たから」等と添えられる事もあります。
これは誤情報(ガセ)です。その根拠をいくつか説明します。
事例が一切ない
「初期は2012年だった」と言う記事には出典元を示したものが全くありません。
2012年が登場する原作や関連書籍、アニメなどを私は全く見た事なく、マニア間の情報として「◯◯に載っていた」という話も聞いた事ありません。
「証拠が一つも無いのだからそんな話は無い。」で十分な説明だと思うのですが、とはいえ悪魔の証明なのでこの論法では納得してくれない人もいそうです。
孫の孫という設定に無理が出る。
理論的な反証方法として「2012だと孫の孫が来るには無理」と説明する事もできます。
第1話で未来から孫の孫が来たと設定されているので、その未来が2012年(に誕生。ドラえもんは10〜12歳なので遠くても2024年から来訪)の設定だとすると、連載年1970年のたった54年後から孫の孫がやってくる(全世代13.5歳で子が生まれる)という事になり、さすがに無理がある設定になります。そんな設定を作るとは思えませんので、2012年がありえない事の説明になります。
疑い深い人だと「初版は「孫」になってたのでは?」とか思うかもしれませんが、初版から「孫の孫」である事を確認しています。
その他、色々と無理が多い。
仮に超初期に2012年という設定があったと仮定しても、2112年設定が初登場する1975年が「時代が追いついてきて変更を迫られるタイミング」というのはおかしいとも言えます。
という事で、2012年という初期設定など無く、誤情報です。(もし見つかったとしても1975年4月以降の掲載ならそれは初期設定ではなく誤植ですね。それすら見たことありません。)
なぜそんな誤解が生まれたのか?
とはいえ、火のない所に煙は立たず…という事で誤解が生まれるきっかけがあったのではと思われるのですが、おそらくはこんなロジックで生まれたのではないでしょうか。↓
こんな感じだったのかなと想像しています。
コメント
原作の鉄腕アトムの時代設定は2003年だし、
そういうところからドラえもんも一緒くたにされてそう。笑
コメントありがとうございます。
連載当時は21世紀と言えば未来の象徴ですからね、そういうのも影響にあったかもしれませんね。