具象化鏡はなぜ「鏡」?鏡に見えない謎デザイン ひみつ道具界のネーミング異端児【ドラえもん】

画像引用:https://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/tool/ka.html

ドラえもんのひみつ道具の中でも珍しいネーミングの「具象化鏡」について書きたいと思います。この道具は「言葉の上の表現を実際に見えるようにする」というもの(例えば「真っ赤なウソ」をつくと本当に赤くなる等)なのですが、全く鏡に見えないこの道具は何が鏡なのか?そしてこの謎のデザインは?

鏡じゃないのになぜ「鏡」?→たぶん比喩の意味で使っている。

この道具を見てもらうと分かるのですが、「鏡」と言う名前なのに全然鏡ではないんですよね。どういう意図で名前に鏡を入れたのでしょうか。辞書では鏡の説明はこんな感じです。

1 姿を映し見る道具。かがみ。
2 レンズを用いた器具。
3 戒めとなる手本。模範。

デジタル大辞泉

「ミラー」「レンズ」「お手本」の意味があります。物理的な意味でのミラーやレンズっぽい道具の効果には見えません(ひみつ道具には「うそつき鏡」のようにミラー型、「手に取り望遠鏡」のようレンズ型だから鏡と名のつく道具はいっぱいあります)。かといってお手本の意味かと言うとなんとなく当てはまるような、そうでないような…という感じです。

・意味合いとしては「比喩表現としての鏡」だと思われる
辞書には直接載っていないのですが、比喩表現の用法としてちょうど良い説明が論文にあったので引用します。

「鏡」は古くから,単に見る者の姿や顔を映し出す物体としてではなく、見る者の考えや感情などを映し出す比喩としてしばしば用いられる。

「魂を反映する「鏡」」早稲田大学 山本 佳生

これは具象化鏡にぴったりの説明ではないでしょうか。確かに時々見かける比喩表現です。「ファッションは時代を写す鏡である」とかそんな感じで使います。おそらくF先生はこの意味合いでこの道具に「鏡」という名前を入れたのだと思われます。

この道具の謎デザインは何がモチーフなのか

画像引用:https://www.tv-asahi.co.jp/doraemon/tool/ka.html

「鏡」という言葉は機能に合ってるとしても、この道具、見た目として鏡じゃないどころかなんとも形容できない形してるんですよね。何かモチーフがあるような形に見えず「なんかの機械」としか形容できない、不思議な形状の道具です。なんでこんな形なのでしょう。

「映し出すもの」という意味での比喩的な鏡であったとしても、本当に道具の形をミラー型にして、そこに写ったものが嘘つきなら真っ赤に見えるとかそういう感じのアプローチもあったと思います。しかし道具の範囲効果が他人や町全体に使われる事もあってか、そういう狭い表現にはせずなんでも表現できる系の道具になっています。

この手の「形の無いものを具体的に出現させる」系の道具は「イメージ灯」「イメージライトキャップ」「タイムライト」などの照明系(投影機)が多いです。「タイムライト」なんて時の流れの可視化だけができるという具象化鏡の下位互換みたいな道具です。なのでこの道具もなんらかのライトをイメージした道具なのか?左右が光るのか?あんまりそうは見えないので謎です。
照明系でないやつだと「イメージ実体機」っていう謎の電波っぽいものを出すモチーフ不明のデザインの可視化道具もあるから、そういう謎機械系に分類される存在なのかなと思います。(あっちは「機」といっているからどんな形でも納得できますが)

「具象化」というずいぶん固いネーミング。しかも重言?

「鏡という名なのに鏡じゃない」だけでもクセのあるネーミングなのですが、前半の『具象化」もなかなかひみつ道具らしからぬワードチョイスです。大人でもあまり使わない単語。意味は「頭の中で考えている形のないものを実際に形にすること。主に芸術方面で使う」なので、この道具の効果をうまく言い表しているとは思うのですが、それにしてもお固い。
普段のひみつ道具が商品名だとすると、これは商品化前の企画書上での仮称感というか、もしくはキテレツ大百科の発明品みたいな感じなんですよね。

しかも「鏡」が「抽象的なものを映し出す」という比喩的意味なのだとすると、「具象化」もほぼ同じ意味なので、「頭痛が痛い」みたいな重言になっちゃうんですよね。

結論:この道具のネーミング経緯の推測

この道具の奇妙なネーミングと全然鏡じゃないデザインの誕生経緯を想像すると、もしかしたらこんな感じだったのかな?と思ってます。

ネーミング誕生経緯の推測

1.まず「鏡」の比喩的な意味「抽象的なものを映し出す」に着目し、そういう機能の道具を考えた。
2.「抽象的なものを映し出す」を読者に伝えるために道具名に収まるような短い表現を考えたら「具象化」という言葉に行き着いた。
3.話の展開上、本当にミラー型では用途が狭くなるのでそれ以上の表現が可能な道具形状にする事にした。
4.音や物理現象にまで影響する道具なので、単なる投影機ではないデザインにしようとした結果モチーフ不明の謎ビジュアルになった。

こんな感じのドタバタでもあったのかなあと想像しています。
もしこの道具の名前が「具象化」だったらあの形状でも「まあ機械ならなんでもあるか」となるんですが、なぜか鏡という比喩的な意味を名称に残したままあのデザインなので「固い名前」「重言」「鏡関係ない謎デザイン」という3つの珍要素を持った謎多き道具に見えて印象に残るのです。

まあその他に無い個性のおかげで私に強烈な印象を残しているので、平凡な名前になるよりよかったのかもしれません。

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