帰ってきたドラえもんの、よく考えるとご都合演出な部分とアニメでどう回避したかを並べて評価。

名作「帰ってきたドラえもん」。ひみつ道具「ウソ800」の効果でのび太の発言が全てウソになり逆の現象が次々と現実化していくのですが、途中途中に説明的なセリフを言う事もあり「あれ、この発言ウソになってなくない?」という部分があります。4回作られたアニメ版等ではそこに工夫が入っていたり、余計に増えていたりと様々なアレンジがありますので全4種紹介し比較します。個人的にはけっこう致命的な1998映画版と、意識して工夫しているSTAND BYE ME版が興味深いので詳しく説明します。

原作の「ウソになっていない箇所」

まずは原作漫画で、ウソ800を飲んでいるのに普通に話しているセリフ達です。

状況セリフ補足
のび太の心境を語るあいつら、ゆるせない。ドラえもんが帰ったなんて。ぼくにとっては、いちばんざんこくなうそだ。ゆるせない!!心の声に近いが、吹き出し表現のため独り言に見える。
ジャイアンとスネ夫に効果を説明おこるなよ。四月バカだからうそついたんだ。だからぼくがいい天気と言えば雨がふる。雨と言えば晴れる。
仕返し継続の宣言さてこんどはどんなうそをつこうかな。

逆の効果が想定しにくいものもありますが、「ゆるせない」発言はのび太が急に許す気分になるとか、効果の説明セリフはウソになるならその時点で道具の効果が消える、とかになりそうです。実際に何が起きるかは重要ではなく、「まったく考慮せず普通にしゃべってる」という点がちょっとご都合だよなと感じます。

「ゆるせない」の部分は心の声っぽい感じもしますが、吹き出し表現なので独り言だと見なせます。これはクライマックスの一番のトリックである「ドラえもんは帰ってこない」という独り言が効果を発動している事を考えると、ここだけ何も起きないのは整合性の点でうまくない部分と感じます。

これらがアニメ化の時にどううまく処理されたのか全パターン見ていきます。

1981年アニメ版。ほぼ原作通りだが少し改善。

最初にアニメ化した1981年「帰ってきたドラえもん」では概ね原作通りですが少し演出面で違いがあります。

状況セリフ補足
のび太の心境を語るあいつら、ゆるせない。ドラえもんも帰ってきたなんて。ぼくにとっては、いちばんざんこくなうそだ。口を閉じた状態で声が流れるので、心の声っぽくなっている。
ジャイアンとスネ夫に効果を説明おこんなよ。四月バカだからうそついたんだ。だからぼくがいい天気と言えば雨がふる。雨と言えば晴れるよ。
仕返し継続の宣言さてこんどはどんなうそをつこうかな。

セリフはほぼ原作通りです。しかし「ゆるせない」の部分は口を閉じてるので心の声っぽくなりました。これなら効果が発動しない理由になりますので演出的に良くなりました。ただそれでもジャイアン達への説明はやはり普通にしゃべってしまっています。

1998映画版。ラストのは致命的なのでは!

1998年映画版「帰ってきたドラえもん」はセリフ追加が多く、良くなったシーンもあるのですが、これは悪手だろうというセリフ追加もあります。

状況セリフ補足
のび太の心境を語るあいつら、ゆるせない。ドラえもんが帰ったなんて。ぼくにとっては、いちばんざんこくなうそだ。ゆるせない!!口を閉じた状態で声が流れるので、心の声っぽくなっている。
ジャイアンの「ウソを考えてきたのか?」の問いに対し(ウソを考えて)きたよ!
ジャイアンとスネ夫に効果を説明
おこんなよ。エイプリルフールだからうそついたんだ。だからぼくが晴れと言えば雨。雨と言えば晴れるのさ。
仕返し継続の宣言ドラえもんの最後の力だ!
仕返しを完了してははは、いい気味だ!面白かった。
仕返しを取り消すために今のはぜーんぶ本当!効果が発動するシーン。ウソになりジャイアン達の仕返しが消える。
虚しくなったのび太の独白(口を閉じ)ドラえもん、ぼく、やっぱりダメだよ(口を開き)でも、さよならドラえもん。桜ももう終わりだね。
効果が発動するシーン。桜が再び咲く。
ドラえもんが帰ってきた後、訪れたジャイアン達に向かって(ドラえもんに向かって)行こう!
(皆に)みんな!帰ってきたんだよ!


今作はウソを発動させる独自追加シーンが2つあり、特に「桜ももう終わりだね」で桜が再び咲くのはクライマックスのフリとして機能しこの作品独自の味わいを生み出しており、道具をより上手く演出に組み込んでいます。
ただ全体的に普通にしゃべってしまっているシーンは増加傾向で、特にラストの「帰ってきたんだよ!」は致命的なシーンに思えます。これじゃドラえもんまた未来に行っちゃう!
制作側は心情優先にして効果の発動しないセリフを多数入れ込んで論理を捨てたのかなという感じで、原作でもそうだからと言えばそうなのですが、ラストのセリフ等はちょっと無配慮すぎかなと言うのが個人的評価です。

2009年アニメ版は最小限にするアプローチ

2009年アニメ版ではウソ発動以外の発言を極力少なくするアプローチが取られているように見えます。

状況セリフ補足
のび太の心境を語る無し無言でスタスタ歩いてジャイアンの元へ。
ジャイアンとスネ夫に効果を説明今日ははエイプリルフールだから
ウソついてもいいんだよね。
仕返し継続の宣言無し。

最初の「ゆるせない」発言はカットされて無言で空き地に向かう形になりました。そしてジャイアン達に説明するシーンもかなり短いものに。道具の範囲下にあるので余計な言葉を言わないようにしているのでしょうか。とはいえ、「今日は~ウソついてもいいんだよね」は反対言葉にはなってないですね。(ウソになっても害は無さそうですが、話の設定に気を使った発言にはなってないですね。)

STAND BY ME版はタイミング等を工夫して最も矛盾がない感じに。

2014年映画「STAND BY MEドラえもん」も独自の工夫が見られます。

状況セリフ補足
のび太の心境を語るドラえもんが来たなんて、ぼくにとっていっちばんざんこくなウソ!あいつら、ゆるせない!ウソ800を飲む前のセリフとして使われる。
ジャイアンとスネ夫に仕返し前の宣言ぼくに謝る気、無い?
(バカにされて)じゃあしょうがない。
ウソ800を持った状態で公園に来て話す。この後、飲む。
ジャイアンとスネ夫に仕返しを効果を説明無し。
仕返し継続の宣言さて、次はどうするかな。

前半の「ゆるせない」発言や、独自に追加されたジャイアン達への最後通牒は、ウソ800を飲む前に言うという変更を入れる事で回避しています。これは独自の対応ですね。
ジャイアン達への道具説明はカットしてます。視聴者には説明不要だし、手にウソ800のビンを持ってるからジャイアン達にも理由不明ながら道具の効果が起きていると察する事はできる、という事かもしれません。
「次はどうするかな」は、「次にやる事はもう決まっている」のウソだとすれば発動下の発言としても成り立ってそうです。
という事で、「事前発言」「説明スキップ」「うまい言い回し」で明らかな矛盾発言は無い状態にしているという点で最も気を使ったアレンジと言えるかなと思います。

まとめ

という事で、原作ではあんまり気にせずやっていたウソ800効果内での説明セリフ等ですが、アニメ化のときには色々と工夫をしたり気にしなかったりで興味深ったです。一番うまくやってるのはSTAND BY MEかなと思います。

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