ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)に登場する敵勢力「ニムゲ」。
アニマル星を侵略しようとする悪の組織として描かれているのですが、根っからの悪人とも言い切れずそれに至る背景を背負ったキャラです。様々な謎がある存在で、この記事では彼らの立ち位置や背景など様々考察解説していきたいと思います。
ニムゲの歴史と各勢力の関係を図解。
まずはニムゲことニムゲ同盟がどのよう存在なのか、簡単に図解したものを用意しました。
このように同じ地獄星の住人でも、先祖、科学者、ニムゲ同盟、連邦警察と4種類が作中に登場します。現在の地獄星の住人は考え方の違うニムゲ同盟と連邦警察の2派になっています。汚れた星で過去の文明の廃品を拾って生活をする非常にみじめな暮らしをしています。
(連邦警察が地獄星に住んでいるという明確な描写はないのですが、同じ星出身である事は明らかで、スパイが自力で帰還できたり文明再建を目指している等の情報から、別星に移住しているより地獄星に住んでいると考えた方が妥当だと考えます。)
「ニムゲ」は種族名?組織名?原作と映画で異なる扱い
作中で単純に「ニムゲ」と言えば地獄星に住む侵略者集団を指す感じでしたが、実はこの呼称は意外と複雑です。伝説上の名前、種族の名前、組織の名前という感じでいくつかの意味があり、それらを整理説明します(原作をベースに映画版も含め説明します。)
ニムゲという言葉が初登場するのはチッポが語る神話です。伝承に伝わる月の悪魔がニムゲ、集団をニムゲ族と呼んでいました。この時点ではニムゲは伝説の悪魔の名前です。
その後アニマル星に謎の侵略者が襲来。アニマル星人はこれこそが月の悪魔ニムゲなのだと解釈し、侵略者=ニムゲと呼ぶようになります。ドラえもん達もアニマル星人の解釈をそのまま受け入れ侵略者達をニムゲと呼ぶようになります。
一方、侵略者達も自らを「ニムゲ同盟」と名乗っている事が描かれ、単に「ニムゲ」と自称するシーンもありました。つまりアニマル星人の解釈は合ってたのです。
同じ地獄星出身である連邦警察は、事件解決時に「人間のすべてがニムゲのようなばか者と思わないでほしい」と言っており、まるで連邦警察はニムゲではないという口ぶりで説明してきます。ここが少し混乱する要素です。
整理すると下記のようになります。
1.神話上のニムゲですが、これは科学者が動物達に伝え残した情報でしょうから何千年前の地獄星では自分達の事を「ニムゲ」「ニムゲ族」と呼んでいたのだろうと思われます。そういう意味では種族名です。
2.現在の地獄星でも「ニムゲ同盟」という名前があるし本人達もニムゲを自称しているわけですから、ニムゲという言葉は今でも通じる地獄星人の通称だと言えます。
3.これがやっかいです。地獄星出身である連邦警察は同じ種族にも関わらずニムゲではないかのように話すので、種族名とは違うのか?という疑問が残ります。
それらが矛盾ないように考えると、下記のような感じなのではないかと思います。
という感じで、「元々は種族名だったが、イメージが悪いので連邦警察は使っていない。現代の用法としてはニムゲ同盟のみを指す組織名扱いになっている」という感じなのではないでしょうか。
なお映画版ではニムゲ同盟はコックローチ団という名称になっている上、連邦警察含めた地獄星の人々が自分達の事を「ニムゲ」と呼ぶシーンは全くなく、「人間」としか言われていません。なので「アニマル星人側が神話の悪魔の名前で一方的に呼んでいる」という感じになっており、本人達がニムゲを名乗っているのかはハッキリしません。(一応、エンドクレジットの声優欄では「ニムゲの総長」「ニムゲの組長」といった表記が出るのでやはり彼ら自身もニムゲを自称しているのではとも思えますが、クレジットなのでわかりやすさ重視にしてるだけの可能性もあり確定的では無いです。)
ニムゲ総長がイケメンなのも理由がある?原作と映画で違うニムゲの姿勢
原作では最後まで素顔の見えないニムゲ総長ですが、映画では最後にマスクを外し、その姿は若いイケメンであるという驚きの展開でした。これは単なるサービスシーンなのでしょうか。原作と比較すると映画版のニムゲは少し立ち位置が異なり、イケメンにも意味があるように見えてきます。
原作 | 映画 | |
---|---|---|
呼称 | ニムゲ同盟 | コックローチ団 |
侵略の主張 | 「宇宙は人間のためにあるのだ!動物も植物も、人間に役立つためにあるのだ!! あの星もわれわれのものにせねばならん!!」 | 「占領しよう!1000年前の豊かな暮らしを、我々の手で取り戻そう!」 |
侵略中の行動 | 破壊に容赦ない。 同志にも厳しい。 | 破壊に容赦ない。 同志を気遣う気持ちがある。 |
先祖への評価 | 「おろかな先祖」と評価 | 「おろかな先祖」と評価 |
総長の素顔 | マスク取らず素顔不明 | イケメン |
総長の最後のセリフ | 「連邦警察か!」 ※締めらしいセリフは無し。 | マスクを外し 「素晴らしい空気だ…」 |
このようにニムゲ総長の描かれ方が原作と映画で少し異なります。
原作では、先祖を愚かと評しながらも結局は人間中心の身勝手な主張を貫いており動物も自然も好き勝手に扱おうとしている奢った存在、つまり「過去と同じ過ちを繰り返そうとしている何も学んでない一派」という感じで描かれています。
一方映画版の方は、目的はあくまで豊かな環境の入手という感じになっています。「生まれた環境が悪かったから豊かな環境を渇望して、過激な手段を取る事も辞さなくなっている一派」という感じで描かれています。
最後にマスクを外し「素晴らしい空気だ…」と言うわけですが、ただただ豊かな環境にあこがれていただけと描く事で同情の余地のある感じになっています。こんな環境にいたら普通の人でも過ちを犯す可能性があるという意図で、いかにも悪人面というキャラではなく普通の人間として描いたのだと思います。(普通を通り越してイケメンになっちゃってますが)
もう一つのニムゲ、科学者は何をしたのか。
地獄星には何千年前に「ある科学者」が存在しました。彼も地獄星の住人つまりニムゲ族だ思われます。動物を移住させる時にニムゲを眠らせたとあるので、ニムゲ族を救うつもりが無い事が読み取れ自らの種族を見限った人という印象です。
彼は何をやったのでしょうか。作中から読み取れるのは以下の通りです。
アニマル星のテラフォーミング
アニマル星は元々は不毛の星でした。神話に「なにもない空っぽの世界だったが、草木を植え、住みよい星にかえた」とあり、テラフォーミングが示唆されます。神話の道具が出てこないので具体的な方法は不明ですが、当時の技術ならできたのでしょう。
動物達の移住
これも神話上で光の階段として伝わっており、実物もワープガス(ピンクのもや)として見つかっています。
(おそらく)動物達の進化促進
移住したての頃の動物は地球上の動物と同じ姿ですが、現在のアニマル星人は姿も知能も人間並に進化しています。何千年(映画だと1000年)で自然進化をするにはあまりにも短く、ドラえもんも「とても自然の進化とは考えられない!生物学的にありえないことだ!!」と言ってます。原作では神話に「チエの実を授けた」とあるので、知性を与えたのは間違いないでしょう。ならば肉体的進化も促した可能性は高いと思われます。
(おそらく)クリーン技術の構築整備
アニマル星は太陽光発電、合成食料、地磁気タクシーなど圧倒的な科学力を持っていますが、一方で住んでいるアニマル星人は牧歌的で、聖典の教えを固く守っており武器や宇宙船の製造を禁じています。アニマル星人は科学を多く自制しているので自らの文化発展だけで作ったとは考えにくく、大本は科学者が構築整備し残したものでアニマル星人はそれを多少の発展で利用しているのではないかと思われます。(でも後半に出てくる先祖の神殿というのは中世のような石造りで、そこから比較すると文明は進化しているとも解釈できますが…宗教施設だから古いだけ?)
科学者の余生について
科学者は動物達を移住させた後どう暮らしたのかは不明です。ただ星の船がアニマル星に埋まっていた事を考えると、地獄星には帰らずにインフラ構築や進化促進に身を捧げたと考えられそうです。
なぜニムゲ同盟は昔の科学者の事を知っていたのか
ニムゲ同盟総長は本格侵攻の前日、同志に演説をします。その際「昔、科学者がワープガスで動物たちをとなりの星へ移住させたらしい」と説明します。アニマル惑星に動物たちの住む豊かな地があった事は直前の偵察で知った事ですが、科学者がワープガスで移住させたという過去の事実は偵察からはわからない情報です。なぜこの情報を知っていたのでしょうか。
これらを矛盾なく説明するのは下記のような事だったのかなと思います。
つまり、科学者の残した情報から隣の星に住める場所がある事はわかっていたが、戦力が分からないので慎重姿勢でとにかく準備だけは進めてきた。そこに偶然光のもやが発生した事でアニマル星の内情を知る事ができ、ついに侵略計画を実行に移す事にした。という感じなのではないでしょうか。
終わりに
ニムゲを様々に考察解説してきました。このニムゲというネーミングセンスは「ニンゲン」をモチーフにしているという説が有力ですが、F先生がそこに込めた思いとして、「人類がこのまま行くとこうなるという警告(先祖)」「ツケを払わされる可愛そうな子孫(ニムゲ同盟)」「やり直せる希望の存在(連邦警察)」という感じで様々に読み解けるようになっていると思います。
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