ドラえもんが青い理由を全4種(+α)紹介。最新は何なのか?

ドラえもんが青い理由は時期や媒体によっていくつかのバリエーションがあり、だいたい4パターンで説明できます。派生も含めて全パターンを網羅説明します。

全4パターンの概要

まずは結論。設定が生み出された始祖4パターンは端的にはこんな感じです。一方で、最近普及している説明は「1+2+3合体型」だったりします。経緯や補足、例外等の詳細は後述します。

またどのように変化してきたかも図解します。詳細説明は後述。

理由1:ネズミに耳をかじられ、自分の姿を見て青ざめた。実はアシスタントが作った設定。

昔から有名な理由です。この設定はコロコロ1978年7月号「ドラえもん百科」で初登場しました。

質問者「ドラえもんの体は、なぜ青いのですか?青いネコなどいないと思うのですが…」

ドラえもん「なにをかくそうこれはかの、有名な一大事件が原因なのだ……。その事件とは、あのいまわしい、ネズミのミミかじり事件…。…………。おそるおそる見たかがみの、おのれの姿に青ざめた……。それ以来、悲しい過去を背おい、ドラえもんは、そう、あのドラえもんの青は、なみだの色なのです。」

引用元:方倉陽二「ドラえもん百科1」

耳をなくした自分の姿を鏡で初めて見た時にショックで青ざめたという描写です。

最初は半公式設定から始まり、デファクトスタンダードに。
この漫画はF先生が描いておらず元アシスタント方倉陽二先生による準公式扱いの漫画でした。F先生が考えたわけではないという意味合いで「方倉設定」と呼ぶ事もあります。正確には「ネズミに耳をかじられた」まではF先生本人が1975年に描いており「ショックで青ざめた」が方倉先生の追加設定部分になります。

このエピソードは1980/1/2放送「ドラえもん びっくり全百科」にてアニメ化されます。この番組はドラが来た経緯や誕生秘話を大公開といった趣旨で、原作第一話「未来の国からはるばると」の初放送などもあり、F先生の原作話と方倉設定の両方をひとまとめに扱っています。視聴者からすると全て作者の考えた設定のようにも見え、F先生が作ってないけど事実上の公式設定として視聴者に刷り込まれていくのでした。

・この設定を採用したエピソード
大山ドラでは1980年11月27日「ドラえもんのガールフレンド」というアニオリ回で「ネズミに耳をかじられ、耳のない姿をガールフレンドのネコ型ロボ、ミーちゃんに笑われ、鏡で自分の姿を見て青ざめる」という描写があります。

わさドラでも2011年9月9日「走れドラえもん! 銀河グランプリ」では耳を失ったのはネズミがかじったから、青くなったのは耳を失った姿を鏡で見てショックで青ざめたとなっています。

理由2:ネズミロボに耳をかじられ、三日三晩泣いたらメッキが剥げた

1995年映画「2112年ドラえもん誕生」にて、ドラえもんの誕生関連が再設定されたものです。耳を失った理由は「工作用ネズミロボットにかじられたから」青くなった理由は「泣き続けて振動でメッキが剥がれたから」に変更となりました。
端的に書くと上の説明ですが、実際はやたら面倒なプロセスを経て青くなります。↓

ドラえもんが青くなるまで

・セワシが宿題で粘土ドラを作ったが耳がうまく作れなかったので工作用ネズミロボに仕上げを頼む。しかし誤解で本物のドラの耳を不出来な粘土に似せるよう行動し、かじられてしまう。
・ロボット病院に搬送。軽い怪我だったが検査中にドラがくしゃみをして手術機械が誤動作、ドラの耳は完全に取れてしまう。その姿をガールフレンドのノラミャーコに笑われて落ち込む。
・元気を出そうと「元気の素」を飲もうとしたが間違えて「悲劇の素」を飲み三日三晩泣き続けた事で振動で体のメッキが剥がれる。この時点でメッキは7割ほど剥げて黄色が残る斑点状態。
・今度こそ「元気の素」を飲もうとしたら、また間違えて「デンコーセッカ」を飲んで体が勝手に動き、砂浜、海、川を爆走した結果、全メッキが剥がれ完全に青色になった。

という流れです。泣きの振動と走りの勢いで青くなりました。理由1はロボが青ざめ変色するというありえない理由でしたが、現実的な設定にしたい意向があったようです。↓

F先生は過去に関係者が作り上げてきたドラえもん誕生のエピソードや設定にご納得されていなかったらしく、時代的に不都合な部分も修正したい、というご意向でした。例えば「ショックで青ざめた」というのがおかしいかな、ちゃんと理屈をつけておきたいな、と。

引用元:藤子FCネオ・ユートピア|米たにヨシトモインタビュー(2004年6月10日)

・F先生の最終公認設定だが、あまり守られてない
この設定はF先生本人が「混乱しているドラ情報、本作が決定版です」「混乱している情報を整理する意味でこのアニメを作りました。もう二度と変えませんから信じてくださいね」と発言しているため、これがF先生存命中に認めた最終公式設定という事に一応なっています。ただF先生が映画全体の脚本を書いてるわけではない事、ドラえもんズやスリムなノラミャーコ等などF先生のドラからはみ出した要素も多数含むせいか後年の製作陣もこの映画設定を全面採用している感じはなく、部分的に採用だったり全く採用しなかったり色々です。

・この設定を採用した他エピソード
2007年9月7日放送「ドラえもんが生まれ変わる日」はこの設定にほぼ近い描写です。ネズミロボに耳をかじられて耳失い、泣きながら砂浜を走ってメッキが剥がれていくという描写があります。

理由3:理由は無い(元々青い)

今まで挙げたものは、「元々黄色だったのがなぜ青になったのか」という説明ですが、その質問自体成立しない状況が初期にはありました。
これは黄色設定が登場する前の初期設定で、製造直後の耳付きドラえもんが初登場した時、ドラは最初から青でした。小学四年生1975年4月号「ドラとバケルともうひとつ」で、耳付き時代のドラと、ネズミにかじられ耳を失うコマがF先生自身の手で初めて描かれます。白黒ページですが通常の青ドラと同じトーン表現で描かれており体は青です。「なぜ青くなったのか」という質問自体が生まれず、「元々青い(だから理由は無い)」という答えになります。

理由1の青ざめ設定(1978)が出る前の3年間、この元々青い設定が継続していました。なお黄色設定が作られてからはF先生もインタビューなどで製造時は黄色と発言しているので、元々青い設定はもう無かった事にしているようです。ただF先生は原作漫画に黄ドラを描いた事は一度もなく※、原作だけ読むとドラが黄色だったとは全く読み取れないです。

・この設定を採用した他エピソード
小学五年生1976年1月号「ドラえもんの大ひみつ」では、3色カラーで掲載されハッキリと青い耳ドラが登場します。ネズミに耳をかじられた事、ガールフレンドに笑われた事などを回想シーン付きで話すのですが、耳付きの製造段階から青く、当然ながら色が変わるシーンはありません。
1978年11月コロコロデラックスのドラえもん制作秘話をF先生が漫画化した「ドラえもん誕生」に登場する耳ドラも青く、この範囲と見なせます。

理由4:学年誌の都合で他の色が空いてなかったから。

作中での理由ではなく、F先生がなぜドラえもんを青色のキャラに設定したかというメタ視点の理由です。1998年「ド・ラ・カルト」には下記のF先生の言葉があります。

「色はどうしようか。あれは学習雑誌で低学年対象ですね。それで最初のページはカラー印刷から始まるケースが多い。扉ページは地色に黄色を使うことが多くて、タイトル文字は赤が多いんです。そうすると赤と黄を除いたら、あとは青。それでドラえもんが青くなっちゃった。」
以上は、藤子・F・不二雄自身の言葉である。なんて簡潔で合理的な考え方だろう。ネコという外見にこだわらずに、読者に対するサービス精神、色彩的な効果の方を優先させた結果だったのだ。

小学館文庫「ド・ラ・カルト ドラえもん通の本」30~31ページ

という事で、ドラえもんの青色は、学年誌の都合で消去法的に決まったわけです。

・これはこれで残る
F先生本人の発言なので間違いはないのでしょうが、これはこれで謎もあって、同じ状況下(学年誌連載)で描かれたF作品はいくつもあるのですが「オバケのQ太郎」は白、「ロケットけんちゃん」は黄色、「すすめロボケット」は赤、「ウメ星デンカ」は赤、「バケルくん」は3色(赤青黄)、「ジャングル黒べえ」は黒、「パーマン」は青です。ドラ以外で青はパーマンだけで、黒や白はいいとして、赤、黄のキャラもいるのでそれらの時にこの理由が採用されなかったのは謎です。まあ結果的にうまくいった理由って事かもしれません。

理由1+2+3のハイブリッド化が主流になりつつある?

後年、特にわさドラ時代は、耳を失ったのは理由1(=3)、青くなったのは理由2という合体版が多くあります。

・わさドラのキャラソン
2005年発売キャラクターソング「ドラえもん・七不思議~其の一~」の歌詞は「ネズミに耳をかじられ」「ショックで泣いたら黄色の体もメッキが剥がれて青くなった」と説明されており、耳は「ネズミ」青い理由は「メッキ剥げ」です。わさドラ開始年にすでにこのパターンはあったんですね。

・わさドラ時代のポッドキャスト
2012年9月3日ポッドキャスト番組「ドラチャン★ドラヂオ」の中でドラ自身が説明します。耳は「ネズミにかじられたから」青色は「僕はその後3日3晩泣き続けたんだ。そしたら泣きすぎてメッキがはがれて体の色が、体の色が青くなっちゃったんだー」です。

・徹子の部屋での発言
2014年8月8日放送「徹子の部屋」では「ネズミに耳をかじられちゃったんです。泣いて泣いて泣きすぎて(中略)メッキが剥がれて青くなっちゃったんです。」と説明してます。

・2015年「小学一年生」の漫画。「塗装」らしい
小学一年生2015年12月号の漫画「ドラえもんたん生のひみつ」(ふじあか正人)でも、ネズミに耳をかじられます。そして耳を失った姿を見たドラは泣いて黄色が剥げていくのですが「ふるえて、きいろいとそうがはげて青くなっていく!!」との説明セリフが添えられます。細かいですが剥がれたのは「メッキ」ではなく「塗装」らしいです。定義上はメッキは金属被膜、塗装は樹脂など非金属被膜ですから微妙に亜種です。

ハイブリッドを採用する理屈を考えてみる。

想像するに「ネズミに耳をかじられる」はF先生の原作からある設定(理由3)なので原作尊重で採用し、黄色が青になった理由というのは方倉設定(理由1)と映画設定(理由2)どちらもF先生が考えたものではないが、決定版と宣言した(&青ざめはおかしいというF先生発言もある)から理由2を優先した。という事なのではないでしょうか。整理するとこうです↓

・耳を失った理由は原作優先で「理由3」
・黄色が青になったという前提を作った「理由1」も受け入れた上で
・変色理由はF先生の決定版発言を優先して「理由2」を採用。

全てを含みつつ、可能な限りF先生自身の筆と言葉を取り入れたパターンという事なのではないでしょうか。

はっきりしないあいまい描写のものも。

説明不十分でどっちかハッキリしないのも時々あります。

・わさドラ放送直後のOP
2005年4月15日わさドラリニューアル時の新OPアニメは、ドラが未来からのび太の元に来るまでをダイジェスト的に紹介する内容なのですが、「黄ドラがネズミに耳をかじられ、ノラミャーコに笑われショックで大泣き。涙が洪水のように画面一面を覆い、戻るとすでに青くなっていた。」という描写があります。
耳を失うのは本物のネズミなので理由1、青くなる描写自体は省略され理由不明という感じです。新ドラを始めるにあたって理由1、2どちらで行こうか迷っていたのかもしれません。

・わさドラで「地金が白」設定と、理由1風の曖昧表現
2012年4月27日放送「ドラえもんの100年タイムカプセル」では、ドラ自身のセリフで昔は黄色かった事と、「耳がなくなったショックで青くなっちゃったんだよ」が語られます。耳はネズミなのかすら分からないです。青の理由もショックとしか言ってませんが、この回の生まれたてドラは、地金が白色でそれに黄色いコーティングするという描写があるため少なくともメッキが剥がれたわけでは無いと考えられます。

結局、今は何が公式設定なのか?

という事で色々な理由に変わってきたのですが、結局今はどれが公式設定なのでしょうか。
結論、藤子プロなどの公式側も一つに断言しないあいまいな状況が現在でも続いています。
理由4はメタ設定なので抜きにするとしても、それぞれに一長一短があるので完全な上位互換ってのは無いんですよね。
なのでファンの間でも
「昔からあった設定だし、理由1がしっくりくる」
「F先生が最終的に決定版だと宣言したのだから、理由2が正解」
「F先生の描いた部分はそのまま尊重すべき。理由1(3)+2がF先生の意図を一番反映している」
という感じで、それぞれが信じる解を持っているという感じで一定ではありません。

それぞれ何を重視するかで回答が変わりますし、ファンも文脈や相手によって使い分けています。流派はこんな感じでしょうか↓

ただ、公式サイドが「元々青い」を現在使う事はまず無く、現在の藤子プロが原作風に耳ドラ描いた場合は黄色です。
なので、理由1と理由2とその折衷の範囲内で揺れ動いている、という感じでしょうか。
ファンも変なツッコミ受けないよう「耳を失った悲しみで青くなった」みたいにどちらとも解釈できそうな表現で言う事多いし、どれも正解ではあります。

時々ある誤情報「涙で剥げた」について。

上記が青い理由のバリエーションですが、時に誤った情報が流れている事があります。それは「涙で塗装が剥げたから」という理由です。これらは誤情報です。

・「涙で塗装が剥げたから」どこから誤解が生まれたか
この誤解の大元は「2112年 ドラえもん誕生」だと思います。確かにドラえもんが三日三晩大泣きし塗装が剥げて青くなるシーンがあり、これを誤解したのだと思います。しかし涙で塗装が剥げたわけではありません。作中ハッキリと「振動でメッキが剥がれた」と言ってますし映像描写もありますので原因は「振動」です。
まあ、「泣くと振動する」というのがピンと来ないというのもあると思います。ひきつけという事なのでしょうが、悲劇の素で加速したとしてもひきつけがメッキを剥がす程の振動(高周波振動的な物)にはならんやろという感じはありますね。
映画版の青い理由を丁寧に説明しようとすると「悲劇の素云々、デンコーセッカ云々…」と長い説明になるので、省略して「泣いて、メッキが剥がれた」と説明されることが多いです。(公式でもドラチャン★ドラヂオ等はそう省略説明してます。)そうやって振動の説明が抜けると「泣く」と「メッキが剥げる」の関係性の間に「振動」を類推するのは難しく、脳内補完して「涙で塗装が落ちた」と勘違いされるのだと思います。
という事で思わず作ってしまいそうな設定ではありますが、明確に涙が塗装を落とす描写がされた事はなく、これは誤解です。

注釈

※:正確には藤子・F・不二雄の描いた黄色い耳ドラえもんは一回だけあります。コロコロコミック1980年2月号表紙はF先生の描いた耳付きドラに黄色く着色された状態で掲載されています。ただコロコロ表紙絵用のドラえもんは、F先生がマジックペンで線だけ描いたものを入稿してそれを出版側で着色するという工程である事がわかっています。この号も確実にそうだったかは調べきれていませんが恐らく同じはずで、だとすると「F先生が黄色く塗った、黄色を指定した」とは言い難く、「線画だけ渡したら、出版側が黄色に塗った」という可能性が高く、真の意味でF先生が黄色いドラえもんを描いた事は無い。と思っています。

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コメント

  1. keizas より:

    かじられて青くなるのはコロコロコミックにも漫画で掲載されてますね。
    1987~1991の間だと思います(実家にあったコロコロがその期間のみなので)

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