夢幻三剣士はアバターなのかNPCなのか、色々と入り組む人格設定を整理してみる。

「のび太と夢幻三剣士」は夢の中が舞台です。この作品は他の映画と大きく違う点があり、のび太達そのものとして冒険するのではなくノビタニアンという剣士等を演じた状態で参加するというロールプレイ的な構成が特徴です。
状況によって没入状態のレベルが違って、キャラ操作的だったり、ボットみたいだったり、完全没入だったりと6種類くらいに入り組んでいる事に気づいたので、それぞれを整理してみたいと思います。

まずは図解

まずは作中にどんな状態が存在して、各キャラが各タイミングでどう変わるのかをまとめました。かなり多いですね。各状態について詳細を説明していきます。

「気ままに夢見る機」は夢を使ったゲーム。ゲーム用語が説明しやすい。

今作のひみつ道具「気ままに夢見る機」は夢の世界に入ると説明されますが、カセットに応じた物語を楽しむ夢の意識を使ったゲーム機という感じでもあります(作中にもこれはゲームだという説明が出てきます)当時は一般的ではなかったですが一種のMORPGという感じです。なので今回はゲーム的な言葉で役割を説明していこうと思います。

プレイアブルキャラ、アバター型

プレイヤー本人が本来の意識を持った状態で、あくまで夢幻三剣士の世界のキャラを演じていると理解してる状態です。夢とリンクするアンテナをつけた状態で夢に入るとこれになります。

のび太=ノビタニアン(第1~2夜)

このゲームの主人公設定はのび太なので、のび太視点で物語が進みます。のび太はこの世界が道具による夢の世界だと認識した上でノビタニアンというキャラをロールプレイする形で話が進みます。
なのでプレイ中でもストーリーそのものや運営(?)に文句を言ったりするし、王女との結婚はしずかちゃんとの結婚だと理解してたりします。
夢から覚めてもプレイ記憶が残ります。

ドラえもん=魔法使いドラモン(第2夜)チートしようとして怒られる。

同じく、ドラえもん自体が魔法使いドラモンを演じたプレイ状態です。ネコ型ロボとしての認識を残しているのでひみつ道具を持ち込んでチート的なプレイをしようとしますが、興が削がれるという事でのび太に怒られます。
夢から覚めてもプレイ記憶は残ってます。

ジャイ、スネ、しず=ジャイトス、スネミス、シズカール(第2夜)強電波のため現実の認識がほぼ無い没入度。

ジャイアン達もアンテナをつけた状態だと本人たちが演じるプレイアブルキャラ扱いなのですが、脇役扱いのためか乗り気じゃありませんでした。そのためドラえもんが夢電波を強く浴びせたのですが、その結果、現実の事をほぼ意識できないくらいの没入度になってしまいます。なのでドラえもんが道具を出す事を魔法と勘違いしたりと、メタな認知はできない状態でプレイします。夢から覚めたらおぼろげに記憶に残ります(ゲームプレイという認識ではなく変な夢を見たという認識)

NPC型

夢幻三剣士の世界の脇役にジャイアン等が配役されているだけの状態で、元ネタ人間の人格のように振る舞うボットNPCという感じで、現実の本人はこの夢を見ているわけではないのでリンクしておらず、夢の記憶もありません。

ジャイ、スネ、しず=ジャイトス、スネミス、シズカリア(第1夜)

第1夜はジャイアン達はアンテナを付けていないので、この段階で登場するジャイトス等のキャラ達はジャイアン達が演じているのではなく、あくまでジャイアン達の姿が当てはまったNPCという扱いです。ただキャラの性格はジャイアン達を模したものになっているのでなんらかの人格的な反映はされているような気がします。人格を移植したボットNPCという感じです。
本人とリンクしていないので、この日の夢の経験は本人達は見ていません。

しずか=シルク(ほぼ人格が別。スキン変更NPCに近い)

世界の案内役のようなポジションの小さな妖精です。しずかちゃんだけは2役設定されているのでこのキャラにもあてがわれているのですが、シルクの方は見た目や声はしずかちゃんだけど性格はしずかちゃんとは別で、人格的には連携していないスキン変更NPCって感じです。シルクの夢の経験はしずかちゃんは見ていません。

没入状態

「かくしスイッチ」を使った状態でのプレイ状態です。作中では「夢と現実が入れ替わる」とされます。状況としては現実の人格を引き継いだ状態ながら、本人は完全にキャラ(ノビタニアン)であるという認識になりのび太である事を忘れます。夢幻三剣士の世界が本当の世界と認識し、本来の日常の事は忘れている(うっすら見た事ある夢くらいの認識になる)状態になります。演じているを超えて、実際に経験しているような状況になります。

ドラ、のび、ジャイ、スネ、しず(第3~4夜)

この状態になると完全にキャラになりきっていますので現実の関係性を完全に忘れています。シズカールは、ノビタニアンと初めて出会った時に本当に初対面という認識で接します。またノビタニアンも、シズカールを最後まで男だと思いこんでいる状態です。またドラえもんも魔法使いドラモンとしか認識されないので、道具を使うという発想にしばらく至りません。(色々あって途中から使い始めます)
夢から覚めた場合、記憶はなんとなく残るのですが「夢の世界のゲームをプレイしていた」のようなハッキリした認識ではなく、どっちが夢だったのかフワフワした感じになります。

ゲームマスター、運営型。

現実世界からモニター越しに参加し、時々天の声のように説明したり、注文に答えたりするポジションです。ゲーム用語的に言えば運営、ゲームマスター的と言えますね。作中では夢に割り込める「インストラクター」と呼ばれます。

ドラえもん(第1夜)

ドラえもんは第1夜は夢に参加せず、外からのび太に設定説明をしたりします。外から割り込む時はウィンドウオープンして顔だけ出してきます。また夢の中ののび太からの注文に対応したり(しずかちゃんの役を変更してもらうとか)、のび太以外の状況を見たりといった事を担当します。

ドラえもん(第2夜) プレイアブルと兼務

第2夜からはプレイアブルキャラとして参加するのですが、リモコンを持ち込んでおり若干の調整事(ジャイアン達の招待や電波調整)も担当します。なのでプレイアブルキャラと運営を兼任した状態です。

まとめ

という事で整理しました。改めて読むとずいぶん複雑な設定だったのだと思い知らされました。のび太目線で見るとしずかちゃんと夢の中で出会ったという認識が無いまま話が終わってるんですね(シズカールという男と剣士仲間になり共闘したと思い込んでいる状態)。非常に特殊な一作です。また話の構成上、ジャイ、スネ、しずは現実の皆と冒険したという記憶としては残っておらず(個人の断片的な夢としての認識)、のび太とドラえもんですら最初のプレイ状況から徐々にあいまいになっていくので最終的にどのような記憶状態でこの一連の物語を認識しているのか謎です。この辺もいつか考察したいです。

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コメント

  1. レサレサ より:

    この手の話題でよく言われるのが、まだプレイ開始前から現実世界に出てきた「トリホーに顔が似て空を飛べる不思議な人」。
    見落とされやすいですが、劇中でトリホーがオドロームに「人間に化けて現実世界に行ってきた」と言っているので他人の空似などではなく明確に同一人物です。
    「ゲーム会社の人が宣伝してたのでは?」という説もありますが、パラレル西遊記の前例もあるので「自我を持ったプログラムが現実世界に出てきてしまった」というのも十分ありなんですよねぇ・・・

    あと、本作で個人的に(メタな理由で)疑問なのが「なんでシルクを静香にしたのか?」。

    本作、珍しく味方陣営のゲストキャラがいません(ドラゴンとかお城の兵士は味方に入れていいか微妙)。
    ここはシルクがドラビアンナイトのミクジンみたいにファンタジーっぽいデザインのオリジナルロボット(あるいはAI)のゲストキャラとして出てきて、ゲームの進行役担当の方が自然な気がするんですが・・・

    仮に「藤子先生が当初静香を妖精シルクとして使うつもりだったけど途中で気が変わった」だと、タイトルがネックなんですよ。
    『のび太“と”夢幻三剣士』…「と」です「のび太+夢幻三剣士」。
    となると最初から3人の剣士がのび太と別に出る想定が自然、そうなると必然的にレギュラーの静香・スネ夫・ジャイアンがその剣士というのが妥当です。
    (のび太入れて3人だと「のび太の夢幻三剣士=のび太が夢幻三剣士というグループ(の1人)」の方が自然)
    一応、「夢幻三剣士」がキャラクターではなくゲームソフトの意味なら「と」でも成立しますが・・・

  2. ノキケロ より:

    現実のトリホーは謎ですね。F先生の初期構想では夢世界の妖怪が現実になだれ込んでくる展開も考えていたようですので、ゲーム内キャラが先行的に飛び出してきたという状況なのかなと考えられそうですね。物語の路線変更をした事でその設定が活きずに謎設定として残ってしまったという感じにも見えます。

    シルクは本当に謎ですよね。あそこにしずかちゃんを当てはめるのは制作意図が読めません。あの小さいキャラのままレギュラー行動を取る想定は考えにくいし、自分もオリジナルマスコットポジにする方が自然に思えます。

    「のび太と」は、分かるような分からないようなネーミングですね。元ネタの三銃士で考えれば主人公ダルタニヤンは三銃士には含まれないので、ノビタニアンも最初から三剣士の外と想定していたとも思えますし、しかし白金装備を始めて身につけた時はノビタニアン含めて「我ら夢幻三剣士」って言っちゃってるから最初はこの3人想定だったのか?とも見れて謎が謎を呼びますね。

    過去に少しその箇所について考えを書いた事もあるのでよければご参照ください。
    https://nokikero.com/dora-movie-no-and-to/#toc10

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