「映画ドラえもん のび太と奇跡の島〜アニマル アドベンチャー〜」のネタバレあり感想です。
今作の総評は「仕切りの無い皿に寿司、カレー、アイスを盛ったビュッフェ。ネタはいいはずなのにカオス。」という感じです。良かった所、気になった所、両面の感想を書いていきます。
この作品は、どこが問題だったのかを分析したくなります。
良い所
主題歌は作中内容と100年企画に見事に合致。
今作はのび太パパとのび太が活躍する家族の絆がテーマです。さらに2012年作品で「ドラえもん誕生(2112年)まであと100年作品」という企画でもありました。
主題歌「生きてる、生きてく」は、少年時代の思い出、親子の繋がりといった作中のパパとのび太の関係を連想させる歌詞と、「100年先」というワードを織り交ぜてドラえもん生誕100年前作品を意識した歌詞がお見事です。
タイトルに偽り無し。奇跡だしアドベンチャー。
今作はドラえもんらしからぬスピリチュアルな存在(ゴールデンヘラクレス)が主軸でSF的要素は低いです。また絶滅動物の社会問題要素は薄く、珍しい動物を多数見せるサファリパーク的エンタメに振り切っています。
F作品らしさが薄いのですが、タイトルは「奇跡の島」「アニマルアドベンチャー」ですので、非科学的な奇跡も起きるし動物は冒険要素だという宣言はしています。「今作はこうです!」という軽いマインドセットで見れば絵的には賑やかなので楽しみ方は上がるのかなと。
いまいちな所
今作、物語の主軸は「絶滅動物」テーマは「家族愛」演出方針は「原作セリフ多数引用」という感じの作りをしているのですが、それぞれがゴチャっと絡まっている印象です。
社会問題を捨てた絶滅動物のセレクト
映画冒頭は短編「モアよドードーよ永遠に」をベースにしたもので、そして舞台のベレーガモンド島は「雲の王国」の絶滅動物保護州からの着想的な内容になってます。元ネタ両作品は、人間の影響で絶滅したとされる動物だけが登場し、社会問題テーマを含む作品でした。
しかし今作に出てくる絶滅動物は、エピガウルス(約530万年前絶滅)、インドリコテリウム(約2000万年前絶滅)など人間の活動と無関係に自然淘汰で絶滅した動物を中心にラインナップされており、「人間の罪滅ぼし、反省から生まれた保護区」ではなく「勝手に滅びた古代動物を無理やり連れてきた動物園」感が出てしまい、単に珍しいサファリパークになってます。

それでいてキーとなる動物は現生生物のカブト虫なので、絶滅動物を扱いながら何を問おうとしているのかピンと来ないです。
(各作品の絶滅動物の差についてまとめた詳細記事もあります。下記からどうぞ。)
ダブルのび太&家族愛という面白そうな設定の未消化
今作特有のポイントは「少年期ののび太パパ(のび助)と一緒に冒険する」で、これ自体は興味を惹く設定ですし、これを軸に家族愛テーマを描こうとしています。しかしうまく扱えていたとは言えないです。
少年のび助が「のび太の事はぼくが守る!」という感じに命を張った親子愛的な行動を見せてくれるのですが、この発生理由がさっぱり描かれません。
少年時代ののび助を連れてきたので彼目線では将来のび太が生まれる事は全く知らない状態です。のび太だけ特別に守るという家族の絆的な動機は発生していません。さらに少年のび助は道具の効果で自分が誰かを忘れているので実質的に新キャラ「勇者ダッケ」であり、性格も違ってのび助要素がほぼ無いです(残るのは絵の上手さくらい)。
家族愛の物語ではなく、勇敢な少年ダッケが顔の似た友人(のび太)へのシンパシーで特別に守るという感じになっています。
のび太そっくりと2人で活躍する話は「太陽王伝説」もあり、あれは王と庶民のギャップからそれぞれが学ぶ面白いテーマで成功していたので、奇跡の島も料理次第では面白くなったのでは…と惜しいです。
原作ネタ拝借の消化不良感。
今作は原作セリフの引用拝借が多数存在し、例年より極端に多いので意図的だと思われます。うまく使えば良いファンサービスになりますが、ハマってないのも多いなと。
| セリフ(映画内) | 映画での登場箇所 | 元ネタ |
|---|---|---|
| 人に頼ってばかりいては、いつまでたっても一人前になれんぞ。 | ペットの世話ができないのび太にパパが忠告する。 | 「さようなら、ドラえもん」 |
| 結局、親だって、人間だもんね。ときには誤解で怒ったり、八つ当たりすることもあるよ。 | 夜に皆で家族の不満と感謝を考える時。 | 「ママをとりかえっこ」 |
| のんびりしているな。それも一生懸命に。 | パパがのび太の性格を振り返る時。 | 「ライター芝居」 |
| これからなにが起こるにしても、ぼく達はず〜っといっしょだよ。 | スネ夫達を救出する事を決心した時。 | 「のび太の大魔境」 |
| 2,3ミリやせたみたい。 | ドラえもんが爆風で飛ばされた時。 | 「ションボリ、ドラえもん」 |
良い引用もあるのですが、爆風のダメージに「2,3ミリやせる」を使う無理矢理さ、ドラえもん最終回の重要セリフをペットの世話レベルに使ってしまうなど、逆に白けてしまうものが目立ちます。
また原作エピソード「ママをとりかえっこ」「ぼくの生まれた日」の1シーンが引用的に描かれますが、ただ単発的に挿入されて、「なんで急に?」感が強いです。
整合性が無い島の設定。
舞台のベレーガモンド島と島民ロッコロ族はどうにも矛盾が多いです。
・敵役シャーマンがやっと見つけた秘境の島なのに、ドラミは検索で島を見つけて普通に連絡したら迎えが来るオープンっぷり。
・ロッコロ族は未来の島に住んで居るのに未開の民族。外界を全く知らないのに突如やってきた絶滅動物とは自然と共存している。
などがあり、立ち位置がかなり説明不足です。
(この辺の矛盾は多すぎるので専用記事を作りました。詳細は下記。)
うっすら性格が悪くなっているレギュラーキャラ達。
なんか今作のレギュラーキャラ達はいつもより性格が悪いです。コロンのお願いを雑に断るのび太、臆病なのび太を嫌いと言い放つしずか、のび太パパを本人の前でバカにするジャイスネ等。これらは次の奮起の行動を促すためだけに本来のキャライメージをはみ出した言動をさせている、物語進行のために性格改変させられている印象です。
理屈の通らない展開、手抜きアクションも目立つ。
作り込みが弱い展開、アクションが目立ちます。
・敵は人質を取ってのび太達にゴールデンヘラクレスを持ってくるよう要求するけど、結局それと無関係に敵は自力でヘラクラスを捕獲する。
・ゴールデンヘラクレスは生命に活力を与える存在だったのにクライマックスで虫を巨大化させる謎能力を発動。しかし理由は説明されない。
・のび太達が敵ロボットの妨害をするシーンには戦術が一切無く単にロボの下を全員でウロチョロ走り回るという意味不明アクションで解決。
等、練り込まずただ配置したような要素は多いです。
まとめ
この作品は、楽しい要素を色々入れようという意気込みは感じます。また基礎部分の音楽、作画、声優演技などは高品質です。ただ「絶滅動物」「家族愛(ダブルのび太)」「原作ネタ」などの要素が繋がってなくて、まるで食べ放題バイキングで仕切りのない皿に寿司とカレーとアイスを盛ってきたような無計画な印象のある作品です。何がうまくいっていなかったのかを分析したくなり自分なりの整理をしました。
ただし今作は当時の最大興行収入を叩き出した作品でもあり集客という観点では成功した作品です。予告編などから伝わるコンセプトが、子供が見たい、親が連れていきたいという気持ちを起こさせたという事でしょうから、そういうパワーはあったという事は認めたいと思います。




コメント