ゴジラ-1.0のネタバレ感想。初見に勧めやすいゴジラ誕生。

映画「ゴジラ-1.0」のネタバレ感想です。総評としては「ゴジラとしては薄口だけど、初心者に勧めやすいゴジラができた」という感じです。

良かった所

久しぶりに出た、初見に勧めやすいゴジラ

この作品が持つ、シリーズの中で特別な価値というのは「ゴジラ初心者に最初に勧めやすい一本」という観点かなと思います。またはシリーズファン以外が見に来やすいゴジラ。
ゴジラは30を超える作品がありますが初心者に「何から見ればいい?」と問われると大変難しいです。初代ゴジラは重要ですが白黒だし特撮もさすがに古いので初心者に勧めるのは厳しい。シン・ゴジラは変化球だし、他の怪獣プロレスから見せるのもなあ、じゃあハリウッド?うーん…みたいな感じになります。
しかしこの作品は、映像的にリッチで、単体作品として見れて、朝ドラっぽい人間ドラマは怪獣に思い入れの無い人にも導入のきっかけになるので新規顧客の開拓として良い感じだと思います。

ビーム関係がめちゃくちゃかっこいい

今作は日本映画とは思えないほどにCGのクオリティが高いです。単純な映像品質もさる事ながら、演出面でかっこいいものもあり、特に放射熱線のシーン(高雄破壊、銀座破壊)は目を見張るカッコよさです。昭和ゴジラの火炎放射器っぽいのとも違い、平成以降のレーザーっぽいのとも違い、シン・ゴジラのバーナー切断っぽいのとも違う、着弾地点が一瞬で蒸発爆発するという演出がかっこいいです。一番近いのは巨神兵のプロトンビームでしょうか。

フィクション少なめの人間の叡智で戦う、絶妙な戦闘バランス

ゴジラシリーズで人間が戦う場合、超兵器型と現実型の戦い方がありますが、個人的には現実型が好みです。しかしエメリッヒ版のように現行兵器(ミサイル数発)だけで倒すってのだと「ゴジラ弱すぎじゃない?」となるのでこのさじ加減は難しいです。超兵器はチートに感じるけど、現実的すぎるとゴジラが弱く感じる葛藤のバランスが難しいわけですが、今回は「強制水没による圧殺」という超兵器無しだけど自然の脅威という強烈さと、それを実現するには人類の叡智の結集が必要という困難さのバランスが好みでした。実現するために集まる民間人達(東洋バルーンいいよね!)のプロジェクトX感が個人的に大好きなポイントです(シン・ゴジラもこの観点が好み)。
さらに最終決戦が海戦というのも新鮮で良かったです。

残念な所

今作は「ゴジラファンへのプレゼント」という要素は少なく、良い所の裏表的な観点で残念ポイントも多くあります。

解説副音声のような説明演出

セリフによる状況説明、驚愕や怒りが過剰なリアクション、スローの溜め演出など、いかにもな日本映画的演出が多数あり、どうもそこが「解説副音声付きゴジラ」という感じで興が削がれる、テンポを悪くしてるなあと感じました。特撮だけ見てると超一級なのに、人間パートになると急に朝ドラ的な演技になるというか。まあ日本映画全般の傾向なのでこの作品だけの問題ではないのですが、近年のシン・ゴジラやハリウッドゴジラと並べると過剰に説明的なのは気になります。
ただこれは前段で褒めた「初心者に入りやすいゴジラ」という観点ではプラスにもはたらいているので、まあ今作はマニア用ではないという位置づけとして仕方ない部分とも思ってます。

敵も味方も妙にクリーンでホワイト

放射熱線や戦艦の破壊など、物体破壊に関しては容赦無い描写がありそれは大満足です。一方、人間の被害についてはどこか手心を感じる作りで、最初の若ゴジラも人に噛みつく割には投げ捨てるだけの甘噛み感がありますし、銀座の大爆発後も街も人もあんまり汚れてないとか、ヒロイン典子もずいぶんキレイな怪我だなあとか、煮えきらない感じがあります。
(他シリーズのゴジラも血を出したり食い散らかすような事は少ないのですが、今回は噛んだ割に血が出ないとか、大爆発なのに汚れないとか、やってる事のチグハグ感が目立つという感覚です。)

またゴジラ決戦前夜、日本の危機的状況で準備の正念場なのに「人命第一。誰も死なない事優先で」「前夜は自宅で家族と過ごしてください」みたいな謎のホワイト業務感があり、テーマ的には戦時中の人命軽視との対比というのは分かるものの、ちょっと能天気過ぎやしないかという感じがありました。ゴジラは人類が全力を尽くさなくとも勝てたのかって感じにも見えるのが気になる所です。まあここは「令和に作られたゴジラ」としてこういう価値観が令和的とされたんですよというゴジラ史の記録としては興味深いかなとは思います。ただ一方で「令和の価値観を昭和舞台でやる事や、ディザスター映画の観点で見た場合にはイマイチに感じるリアルタイム視聴者がいた」という意見はここに残しておきたいです。

まとめ

総評としては「これでゴジラシリーズは続くだろうな」というヒットへの安心感があり、とても嬉しく満足感がありました。一方、敷居の低さや小綺麗さはファン的には物足りなくもあり表裏一体です。山崎貴監督作品ですので、その作風範囲では大成功パターンだと思います。(ドラクエみたいに時々大失敗する事があるので、そのパターンじゃなくて良かったです。)
ちなみに私のベスト作品は「シン・ゴジラ」と「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」なので、そういう人の好みとの差だと思って読んで頂ければ。
あと、「STAND BY ME ドラえもん」も同じ山崎貴監督ですが、こちらも似たアプローチで範囲内成功をしているという評価です。そちらについては下記↓に書きました。

またある意味正反対の所に位置する虚淵玄による、最も初心者お断りのゴジラ「怪獣惑星」についての感想はこちら↓

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コメント

  1. レサレサ より:

    ゴジラの映画で「絶妙な戦闘バランス」ですと『ゴジラの逆襲』をお勧めします。(白黒で画質が悪いのが難点ですが)

    前作を踏まえたことによる「ゴジラを倒せないが対策はできる」という微妙な力関係や、ゴジラの行動パターンを踏まえて、それを守ったうえでの防衛作戦の裏をかかれる大阪壊滅展開。
    終盤のオホーツク海での戦いも含めて最後まで架空兵器をほとんど出さず(皆無と思いましたが大阪戦に出てくる24連装ロケット砲車がオリジナルだそうです)、それでいてゴジラが強敵としてまとめてありました。

    ・・・自分としてはなんでこれが新シリーズ作るたびに黒歴史扱いなのかが分かりません。

    『キングコング対ゴジラ』以後はノリが違うからなかったことにされるとかは分かるのですが、本作はノリは初代に近いし、ゴジラが明確に死ぬ描写もないため(実際『キングコング対ゴジラ』で復活している)「ゴジラに二匹目が?!(初代→新作パターン)」とか「未知の巨大生物出現!(初代もなしパターン)」より「『逆襲』のゴジラが復活した」ってすればすんなり導入できるのに。

    • ノキケロ より:

      コメントありがとうございます。
      なるほど、ゴジラの逆襲を見たのがだいぶ前なのでアンギラスとのバトルが記憶のメインになっていましたが、対人戦闘バランスに着目すると面白そうですね、また機会があれば見直したいと思います。ありがとうございます。

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