のび太が「ビリから2番」なのはなぜか?定説とは違う連載時の状況を考えてみる。掲載号にヒントあるかも。

2025年8月3日ドラえもんで「りっぱなパパになるぞ」が放送しました。(原作あり)
この話の中で、のび太の成績は「ビリから二番」である事が判明します。
のび太は0点の常習犯なので普通に考えるとビリそのものですが、なぜビリから2番なのか。よく言われる考察は「ビリは多目くんだから」ですが、連載状況的にはそうでもないのかも、どちらかというと卒業号としてのメッセージだったのではというのを記事にしていきます。またトップ1番は誰だったのか?も触れていきます。

ビリから二番と明かされるシーン

未来の世界でノビスケの日記に記された内容から下記のように明らかになります。

(ノビスケの日記に書かれている内容)
成績が落ちてしかられた。「パパなんかいつも二番だったぞ」といばったが、じつはビリから二番だったことを、ぼくはちゃあんと知ってるなり。

引用元:てんとう虫コミックス ドラえもん16巻「りっぱなパパになるぞ」

という事でいつの時期は不明ながら、のび太はビリから二番だったと判明します。

定説は「ビリは多目くんの事」。しかし連載当時はまだいない。

ファンの中でよく言われる考察は「1番のビリは多目くんだから」という説です。
「ぼくよりダメなやつがきた」の回に出てくる転校生で、勉強も運動ものび太よりできない少年です。話の最後にまた転校して去るので一時的でしたが確かにのび太がビリではない時期がありました。この事を指しているのだろうという説です。小学館、藤子プロ公式の考察本「ドラえもん深読みガイド」でもこの解釈をしています1

ただ、この解釈は今でこそ辻褄が合うものの、連載当時としてはこうは読み取れない状態でした。
「りっぱなパパになるぞ!」は小学六年生1977年3月号2。「ぼくよりダメなやつがきた」の掲載は小学六年生1980年8月号3当時はまだ多目くんは登場していないので、当時の読者としては「1番のビリは誰?」となる状態です。

雑誌連載時期的に、F先生の前向きなメッセージ説。

別の説として「のび太は本当に将来ビリから2番になれた」と解釈する事もできます
「りっぱなパパになるぞ」は小学六年生1977年3月号掲載です。この「小六3月号」というのが重要で、ドラえもんは連載が学年誌という都合、この話のリアルタイム読者はほぼ小学六年生のみ。来月には中学生になるためこの3月号が卒業号となりこの雑誌から離れていきます。そのためF先生はドラえもんの区切りとなる読者の皆に向けて前向きなエールを贈るような話を3月号に描く傾向があります。例えば下記のようなものです。

「小学六年生」発行年月タイトル話(肝の部分)
1976年3月号シャラガムのび太は立派な大人になるために決意した内容を自分の意志でやり抜く。
1977年3月号りっぱなパパになるぞ未来の大人のび太と会話し、やれる範囲でがんばる事を決意する。
1978年3月号あの日あの時あのダルマのび太がおばあちゃんとの約束を思い出し自分なりに努力を始める
1983年3月号のび太もたまには考えるのび太は今のままではダメだと気づき、努力しなくてはとの結論になる。
1985年3月号右か左か人生コースのび太は厳しい道でも決意した事を覚悟を以て進む。

どれも「のび太ものび太なりに努力をしていく」という感じの話です。のび太もがんばるから読者の皆もがんばってねというメッセージと言えます。
そう考えると、それまでのドラえもんの話の範囲ではのび太は明らかにビリなのだけど、この話ののび太は最後の宣言「やれるはんいでがんばるぞ!」を実践し彼なりにがんばり続けて、今より少しだけ良くなれた。彼は一生ビリのままではなく(中学生とかで)ビリ2にはなれたんだよ。というのび太のささやかな成長を表現したもので、過去話から読み取れる何かを当てはめたものではないという考え方もできます。
当時の描写意図としてはこうだったのかもというのは有り得そうな気がします。

おまけ:トップの一番とは誰だったのか?

大人のび太は1番とは言わず2番という微妙な見栄を張ったわけですが、ビリだった時期もあるわけですから1番という誤魔化しも出来たはずです。なぜそう言わなかったのでしょうか。
クラスメイトには圧倒的エリートの出木杉がいるし、ノビスケはその息子ヒデヨと交友があるので、さすがに1番だったと言うとバレるから控えめに2番と嘘をついた。というのはあり得る解釈です。ただこれも今では辻褄が合うものの連載当時の状況としては合いません。出木杉の初登場回はコロコロ1979年9月号なのでこの当時は出木杉はまだ登場していませんし、息子ヒデヨとの交友は小学六年生1989年6月号なのでさらに後付けの設定です。
連載当時のメンバーで考えるとしずかちゃんが1番だろうから、妻の前で1番と嘘つくのは色々問題が出るから2番と言った。という解釈はできそうですね。

まとめ

というわけで、「上から二番だと思ったらビリから二番だった」というギャグとして読む表の意味に、もしかしたら成長の願いを込めた裏の意味もあったのかも。という解釈でした。多目くんというマニアネタとしても読み取る事ができて、面白いですね。

脚注

  1. ドラえもん深読みガイドてんコミ探偵団 P55「のび太の学力を探る!」より。 ↩︎
  2. 当時のタイトルは「のび太のゆくすえ」 ↩︎
  3. 当時のタイトルは「「配役いれかえビデオ」で反省!…」 ↩︎

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コメント

  1. レサレサ より:

    ドラえもんの話ではないのですが、『新オバケのQ太郎』だと正ちゃんは「テストの点がクラスで下から2番」というのが定位置という設定でした(「ビリから二番を守る」より)。

    パーマンでも80年代版のエンディングで「君のクラスのビリから二番」(がパーマン)と歌ってたし、藤子先生的にはこういった主人公達は勉強は苦手だけど最下位ではない次元のつもりだったのかもしれません。

    • ノキケロ より:

      興味深いコメントありがとうございます。
      なるほど、F先生のアイデアの引き出しとして主人公がビリから二番というのは確かに納得感ありますね。
      普遍的な主人公として極端な設定しないワンクッションというのは確かにありそうです。

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