ドラえもんの時代設定は?2方向から迫る「現実と時代設定がズレてく問題」について

「サザエさん時空」。いくら連載が続いてもキャラの年齢が変わらないというヤツです。ドラえもんもその一種ですが年齢はともかく、時代設定はどれくらい現実に追従しているのか色々調べてみました。

参考。長寿作品達の時空

他の長寿番組達がどんな時空なのかも軽くまとめました。なおドラえもん以外は一般知識レベルです。

作品時代設定時代の取り入れ
ちびまる子ちゃん固定(1974~75)標準的
サザエさん常に現代めちゃくちゃ消極的
ドラえもん常に現代消極的
クレヨンしんちゃん常に現代積極的

ちびまる子は時代設定を70年代に固定しているので時代のズレは起きないですね。
クレしんは時代に追従型です。ポケベル→携帯電話→スマホと変化し、SNSや在宅ワーク等も登場します。
サザエさんは昭和固定と思ってましたが、スカイツリーや携帯電話、デジカメが出る事もあるそうで制作側が「後ろ端にギリギリしがみついているくらいの現代」と発言しており一応現代らしいです。
ドラえもんは後で詳細に説明しますが、常に現代だけど時代追従は消極的って感じですね。

新製品などを取り入れる早さを表すイノベータ理論で表現すると、
クレしん … アーリーマジョリティ
ドラえもん … レイトマジョリティ
サザエさん … ラガード
という感じでしょうか。(こち亀はアーリーアダプターかイノベーターですね)

年表記は、原作もアニメも常に「今の年」として描かれる。

ドラえもんの話に入ります。作中に年表記が出る時は基本的にその掲載年、放送年で描かれ、常に現代である事が示されます。
例えば「竜宮城の八日間」で現在の西暦を聞くシーンがあるのですが、1980年雑誌掲載では「今は1980年」と書かれ、1982年単行本化で「今は1982年」に書き換わります。1985年にアニメ化した際には「今は1985年」というセリフになり、わさドラになっても2014年の再アニメ化は「今が2014年」になってます。また元々は20世紀の漫画だったけど、今ののび太は「21世紀に住んでいるよ」と言ったりして常に今の出来事だとされてます。数値としては常に追従してます。

風景描写。原作連載中は意外と時代に追従していた。

風景描写はどうなのか。原作は1970年1月号から始まり、存命中作品は短編が1994年、大長編は1996年までありますがその26年間の時代の変化には意外としっかり追従しています。
初期の野比家は白黒テレビを使っていました(1970「タイムふろしき」)が途中からカラーテレビに変わりました。また洗濯機も当時の平均だった屋外型だったのが途中から室内型に変わり、冷房のなかった野比家にクーラーが導入されたり、スネ夫はビデオを持っている事を自慢し始めたりと、家電の流行は取り込んでました。

電話もダイヤル式黒電話だったのが、のび太の夢幻三剣士(1993)からコードレスプッシュホンに変わりました。これには面白い裏話もあり、当時F先生が自宅の電話をコードレスに変えたから野比家も変えたという発言が残っています(ドラえもん物語~藤子・F・不二雄先生の背中~)。という事でF先生が普段の生活から一般普及と判断した要素は取り込んでいる節があります。

ちなみに野比家は中流の少し下という感じなので贅沢品をポンポン入れられず「今年はじめて中古のクーラーを買った(1978「季節カンヅメ」)」という感じで導入されますが、スネ夫は金持ちなので最新家電も取り込みます。

F先生の遺作となった「のび太のねじ巻き都市冒険記(1996)」第1話原稿コピー枠外には「のび太の部屋に体温を与える徹底研究」と言う指示書きが残っており、「今時エアコンを無視するのも非現実的なので古めかしいのをつけてやりましょう」というメモと、机の左上にエアコンを描いた想定図が残されています。ただ漫画本編では画角的にこれが見えるシーンが無かったせいか、反映される事なくのび太部屋には未だにエアコンが無いのですが、意思としては時代への追従を晩年までしていた事が伺われます。

F先生没後も時代についていく姿勢だけど、止まっている所も。

F先生没後もアニメは続き今でも新作が作り続けられるわけですが、スカイツリーが登場する等町並みが変わったり、野比家も薄型液晶テレビに変わったり、ミルクを温めるのが鍋から電子レンジになったりと家電の追従は今でもそれなりにしています。
何でもかんでも追従しているわけではなく、特にスマホ系の情報機器、SNSやネット等の情報サービスはほとんど登場しません。といっても「のび太の地球交響楽」でスマホで音楽聞く人が登場したり、スネ夫がタブレットを持っていてyoutubeっぽいチャンネルを開設する(2021「骨川マイスターの Do It Yourself」)等、うっすら登場する事はありますが、レギュラーキャラが常備するような所までは行っていません。

逆の時代問題も。「未来が追いついてしまう問題」

他の長寿作品の悩みは「掲載時の時代設定と今現在が離れて古めかしくなる事」だけですが、ドラえもんの場合は「作中の未来設定と現実が近づいてくる事」という問題も持っています。「スマホやGPSがあれば解決するのでは?」とか「このひみつ道具今の技術でできるのでは?」みたいな状況が生まれる事もあります。

「進化退化放射線源(1975)」の原作では古いラジオを道具の力で当時最新のラジカセにして、さらに未来の腕ラジオ(テレビ、テープレコーダー、トランシーバーつき)に進化させて自慢するのですが、現代ではラジカセはもちろん古く、腕ラジオすらスマートウォッチに負けます。そのため2006年の再アニメ化では道具の力で古いラジオ→ラジカセになったのを見たのび太は「でもこれまだちょっと古いよね」と言い、更に進化させた未来のラジオは「電話にビデオカメラ、コンピュータ、時計、立体テレビ付き」と、機能を足してさすがに存在しないレベルの未来ガジェットにすることで対応しました。

逆に一切の言い訳なくそのままやる話もあります。「うつしっぱなしミラー」は離れた任意の景色を見たり巻き戻したりできる道具でそれ自体はまだない未来技術ですが、オチが「離れて暮らすため顔が見れない親子を会話させてあげる」という物です。それくらいなら今のビデオ通話で余裕ですが、2022年に再アニメ化した時も特に現代的にせずシレッとそのままで描かれてました。

技術的にはもう可能なものでも、それを使った話運びの面白さで勝負している話も多いです。連載当時から現代技術でできそうな道具と言うのもありました。「山びこ山(2代目)」は録音した声を遅れて再生するだけの道具です。

終わりに

こんな感じで時代とのすり合わせをしているドラえもん。F先生が存命であれば普通にスマホとか持ってる世界になってたのかなと思います。残されたアニメスタッフは原作を残す事と時代に追従する事のせめぎ合いをしている感があり今後どう育っていくのか。そこらに着目しながら見ると結構面白いです。

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