2026年4月18日放送「もぐれ!ハマグリパック」では、原作同様に「0点を取ったのになぜか喜ぶのび太」のシーンが登場します。普通に考えると変な理屈なのですが、考え方によっては妙にテクニカルな評価でのび太が統計トリックの天才か誠実な統計学者にも見えてきたのでその観点を書きます。
のび太の0点シーン
のび太がどのように0点を喜んだのかは下記のようなものです。
これまでぼくは、五回に一回のわりあいで0点をとってたんだよ。
引用元:てんとう虫コミックス ドラえもん42巻「もぐれ!ハマグリパック」
こんどは、九回つづけて点をとったんだよ。わずかだけど、十回めの0点はひさしぶりなんだぞ。
という感じで、凄いのか凄くないのかわからない理由で喜びますが、ドラえもんも「これはたいした進歩だ」とすっかり飲み込まれている感じです。これを深堀りしていきます。
のび太が無意識に使ったテクニック
のび太は深く考えずこの結論に至ったようですが、よく考えると3段階のテクニカルな手法を使ってすごく良い事のように話します。
平均点を使わず「0点か否か」と2値化して評価(成功率80%に)
成績は平均点で評価するのが普通です。その場合のび太は非常に低い評価になります(アニメ版では具体的に描かれ、平均7.2点)1。
しかしのび太はそれを「0点か、点を取ったか」という観点で評価して、要は1点でも取れたら成功側と考える事で、今までも5回に1回しか失敗してない(=成功率80%)という印象で話します。
直近10回だけに着目して、成功率90%とする。
さらにのび太は、直近10回に着目してそこだけで実力を評価します。
実際は過去に膨大に重ねた「5回に1回の割合」があるので、直近の調子が良いだけでは成功率80%にはほぼ影響を与えない(微増程度)ですが、直近10回だけで評価する事で成功率90%だと判断しています。
失敗率の変化で評価して、2倍の成長率の印象にする。
成功率が80%→90%と表現すると、成長具合は1.125倍なのでそんなに変わらない印象ですが、のび太はこの事を「5回に1回から、10回に1回へ」と言う感じで失敗率の変化(20%→10%)に着目して話します。まるで2倍の成長をしたように見える表現になっています。
まとめるとこう。
これらをまとめると、
本来は「テストの平均7.2点の状態」というだけの事を
のび太は「成功率80%だったのが直近は90%に。これは0点回避率が2倍に向上したという事だ」
と説明した。
って感じになるのかなと思います。ずいぶん印象が違います。自分は統計に詳しい訳では無いですが、難しく言うと「ベルヌーイ試行として2値で捉えて、局所標本を使い、相対リスクで成長率を評価した」みたいな感じで言えるのかもしれません。
0点の出現を喜ぶのもデータサイエンティスト的なかっこよさが。
「0点が出たから喜ぶ」って言うのも面白いです。前述の数値テクニックは0点が出る前でも暫定的に説明可能なのですが、あえて0点が出て直近の確率が確定してから判断するという妙に統計的に誠実な態度を取っていて、0点取ってもショックを受けるのではなく最尤推定を確定させられる標本データが手に入った事を喜ぶという感じで、統計学者とかデータサイエンティスト的なかっこよさがあります。
まとめ
という感じで、屁理屈みたいなポジティブシンキングに見えるけど、実はウソの無い範囲で成果を最大限良く見せる統計マジックのようにも見えて面白いです。F先生は、人が思わずやりそうな自己正当化を詭弁ギャグとして簡潔な言葉で直感的に表現したのかなと思われますが、それが統計的観点で見ても意外と筋の通った理屈になってるのは凄いなと思います。
脚注
- アニメの中では直近10回のテストが8,5,10,5,10,10,9,5,10,0点と描かれます(平均7.2点)。 ↩︎



コメント
自分はこの話で最初「0点がうれしいのか?」と思いましたが、よく考えたら「0点をあまりとらなくなったなぁ」って喜んでいたんですね。
『エスパー魔美』の高畑さんの「自分は平均打率が1/ナントカで、前回からナントカ回連続三振。よって今回はヒットになる。」というデタラメ統計学(高畑の設定からして「本当に勘違い」ではなく、「打者にしてもらうための方便」と思われる。)に比べるとのび太の方は割と素直に飲み込める理屈ですね。
コメントありがとうございます。相変わらずの引き出しの豊富さにびっくりです。
なるほどエスパー魔美の高畑さん、ありましたね。
確かにあれも統計ギャグ(?)ですね。
高畑さんらしからぬ無茶な理屈ですが、あれはその後の魔美を圧倒的不利な状況でも信じるという「理屈じゃないんだよ」の前フリとして自分の野球にもそれを適用しているって感じなのでしょうかね。